プロ22年目、西武・中村剛也を突き動かす「もうちょっと野球がうまくなりたい」の思い (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

「あの当たり方だと、切れないですね」

 レフトポールへ引っ張った当たりがファウルにならないのは、好調の証か。そう質問された中村は、打った直後に確信したと明かした。

 それほど完璧な一撃だったが、「あの当たり方」とは何を意味するのか。バッティングの一般論として「前の肩を早く開きすぎるな」「バットを内側から出せ(インサイドアウト)」「インパクトまで手首を返すな」と言われるが、本人の見解を聞きたい。そこで帰り際に解説を求めたら、「解説はできないです」と笑顔で一蹴された。

 漠然とした質問は、あっさりかわしてくるから中村との対話は面白い。「打ててよかったです」というシンプルな談話が有名だが、取材者が明確に意図を持って聞けば必ず答えてくれる。

 中村は試合前の打撃練習で、誰より丁寧にスイングを重ねている。思いきり振り回す若手を尻目に、手首を返さず、力をそれほど入れずにコンタクトをまずは繰り返していく。そういう延長線上にあるホームランだったのだろうか。

「そういう練習の......」

 そう言って思考を巡らす中村に、「賜物?」と投げかけた。

「賜物......。そんな、いいものでもないですけど(笑)。まあ練習でやっていないと、できないっていうところもあるので」

 試合前の丁寧な練習こそ、ホームランアーティストをさらに美しくさせているのだろう。

【プロ野球史上初の2000三振】

 中村と言えば、もうひとつついて回るものがある。三振だ。プロ野球史上初の2000三振を記録したこの日の試合後、球場から引き上げるところを記者陣が待ち受けた。

 とりわけホームラン打者にとって、三振は思いきり振りにいく"代償"である。そんな趣旨の質問が投げかけられた。

「そうですね。時と場合にもよると思うんですけど。追い込まれたら、なかなかヒットを打つのは難しいし。追い込まれた時に、どうせ打てないんだったらしっかり振ろうかなと。だって、すごくいいバッターでも、追い込まれたら2割打てればいいとかじゃないですか」

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