松井稼頭央は踏襲できるか 西武の新監督に「脈々と受け継がれるジンクス」 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

【寛容力で前年Bクラスから日本一】

 かつて西武のエースとして活躍した渡辺久信だったが、現役晩年はヤクルト、台湾球界でプレー。そうした経験が指導者として役に立ったと語り、選手たちにはのびのびとプレーさせることにこだわった。

 渡辺監督就任1年目の2008年、片岡易之(=保幸)が最多安打と盗塁王、栗山巧が最多安打、中島宏之が最高出塁率、中村剛也が本塁打王に輝く活躍。投手陣も涌井秀章、帆足和幸、岸孝之の三本柱が10勝をマークするなど、指揮官の思惑どおり若手が躍動した。

 日本シリーズでも4勝3敗で巨人を下し日本一。新監督が前年Bクラスのチームをレギュラーシーズン優勝に導き、日本シリーズまで制したのは史上初の偉業だった。

【東尾修と辻発彦はリーグ連覇】

 そのほかにも、監督就任1年目こそ優勝できなかったが、東尾修は3年目の1997年からリーグ連覇を達成し、辻発彦も2年目の2018年からリーグ連覇を成し遂げた。

 さて松井監督率いる今年の西武だが、源田壮亮、山川穂高という主力をケガで欠きながらも、4月27日現在、12勝9敗でパ・リーグ3位につけている。高橋光成、今井達也、平良海馬らを筆頭とした先発陣が着実に力をつけ、チーム防御率2.49はリーグトップ。かつては"山賊"の異名をとった強力打線がウリだったが、昨年あたりから投手陣を中心とした守りの野球に方向転換。

 そして今年、松井監督が掲げたスローガンは「走魂」である。投手力と打力が拮抗した場面で、均衡を破るのは走力だ。現役時代、3度の盗塁王に輝いた松井監督らしい戦いで頂点を目指す。はたして、松井監督は吉兆を踏襲できるのか。その戦いから目が離せない。

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