侍ジャパン戦士のWBCの影響は? 好調、不調、離脱......優勝から1カ月後の現状 (2ページ目)

  • 紙井昇●文 text by Kamii Noboru
  • photo by Kyodo News

 WBC開幕前は、「主力として多くの試合に出場する選手はいいが、試合出場、打席数が少ないバックアップの選手はシーズン序盤に苦戦するのではないか」という声もあった。WBCの招集期間は、各チームの主力たちはオープン戦で実戦勘を取り戻す時期。その時期に代表チームに呼ばれ、例年であれば積めたはずの打席数、実戦経験が不足し、シーズンで苦労するのではないかという仮説だ。

 WBCで"スーパーサブ"の役割を任されたのが、鈴木誠也(カブス)の代替選手として緊急招集された牧原大成(ソフトバンク)。7試合中6試合に出場するも、代走、外野の守備固めとしての出場が主で、消化した打席はわずか2。それでも、シーズンでは14試合に出場し、打率,291と奮闘している。

 一方、代走の切り札として準決勝・メキシコ戦でサヨナラのホームを踏んだ周東佑京(ソフトバンク)は、シーズンでは牧原と同じく14試合に出場して打率.208。WBCではやはり1打席しか立てなかったが、調整期間の長さが2人の成績の差に表れているという見方もできなくはない。

 前倒しの調整の影響か、代表戦士の中には故障離脱中の選手もいる。大会期間中は不振にあえぎ、代打での出場が主だった山川穂高(西武)は、4月9日のソフトバンク戦の翌日に登録抹消。右ふくらはぎの強い張りが原因だと発表されている。

 さらに山田哲人(ヤクルト)は、12日のDeNA戦4回の凡打で一塁に全力疾走した際に下半身を負傷。こちらも翌日に登録抹消されている。山川と山田の離脱を見るに、WBC、シーズンの両方を万全の状態で戦いきる難しさが浮き彫りになった印象だ。

 シーズンと異なるボールで登板しなければならないなど、感覚の調整にも苦慮した投手陣の成績はどうだろうか。

 4月14日には、山本由伸(オリックス)、佐々木朗希(ロッテ)の"侍ジャパン対決"が実現。プロ野球ファンが固唾を飲んで見守った珠玉の投手戦は、7回1安打無失点、11奪三振の快投を見せた佐々木に軍配が上がった。

 その他、代表選出の投手だと戸郷翔征(巨人)の安定感が目立っている。ここまで3試合に先発し、2勝1敗、防御率は0.89。大舞台で得た自信がシーズンにも好影響を及ぼしている印象だ。巨人のチームメイトで、大会4試合4イニングを投げ無失点だった大勢も、ここまで4試合で救援登板して自責点0。ふたりの侍戦士の勢いを味方に、チームも浮上していきたいところだ。

 腰の張りで途中離脱を余儀なくされた栗林良吏(広島)はシーズンには間に合い、今シーズンもクローザーを任されている。ここまで7試合に登板して5セーブを記録しているが、4月18日の阪神戦の1点リードの9回に登板するも、侍戦士の中野拓夢に2死満塁からサヨナラ打を浴び、早くも自身ワーストタイの2敗目を献上した。野手と同じく、投手陣も悲喜こもごもである。

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