WBC日本代表ブルペン捕手・鶴岡慎也が見たダルビッシュの変化 中継ぎ投手は「この状況になったらこの投手」と事細かく決まっていた (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

── 4戦目、オーストラリアのニルソン監督は日本でプレーした経験があり、2004年のアテネ五輪では捕手として日本戦の勝利に貢献しました。

鶴岡 昨年11月の強化試合では、8対1、9対0でオーストラリアに勝利しました。ただオーストラリアの選手はそのあとの国内リーグで調子を上げ、初戦の韓国戦に勝利するなど、侮れない相手でした。事前のキャンプでネルソン監督は「パワフルな打撃陣とコントロールに優れた投手陣に注目してほしい」と語っていたようで、そこがハマったら怖いなと感じていました。

 しかしその不安を、初回の大谷選手の3ランが打ち消してくれました。大谷選手はプロ入り時、左中間に伸びる打球が印象的な18歳でした。10年の時を経て、メジャーでMVPを獲得した打撃は、バットコントロール、スイングスピード、飛距離など、すべての要素が格段にグレードアップしていました。

 試合前の打撃練習で、私は外野を守って彼のバッティングを見ていましたが、とにかく飛距離が圧倒的です。ふつうの打者なら落下する角度の飛球がそのままスタンドインしてしまう。常識を覆す大谷選手の打撃でした。パ・リーグ本塁打王の山川穂高選手(西武)が見とれたくらいですからね。

── ほかに1次ラウンドで気づいたことはありましたか。

鶴岡 やはりWBCの公式球ですね。NPBで使用されるボールより縫い目の山が高いし、皮の質が違って滑りやすいと言われています。もちろん個人差はあると思いますが、変化球の曲がり具合も違うので扱うのは難しかったと思います。それでも、シーズンと同じような投球をした日本人投手の適応能力の高さをあらためて感じました。

 あと個人的には、今回初めてブルペン捕手を経験して、いらぬ感情を挟まないのが"いいブルペン捕手"なのだということがわかりました。投手が投げることだけに集中できるよう、何もなかったかのように捕って、何もなかったように投手に返す──この重要性をあらためて知りましたね。

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