なぜ石川雅規、和田毅は40歳を過ぎても活躍できるのか 元チームメイト五十嵐亮太は「彼らは今も目がキラキラしている」 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【自宅でも常に野球のことを考え続ける和田毅】

―― 一方、和田投手はどんなタイプの選手でしょうか?

五十嵐 彼はタイプ的に、変化球でかわしていく技巧派ではないんです。コントロールで勝負したり、打者のリズムを狂わせたりするのではない「力で押していくタイプ」だということを、ソフトバンクに入ってから気がつきました。

一緒に話していると、口調はとても穏やかで丁寧なんだけど、性格は「自分の力で抑えてやるぞ」というパワーピッチャーそのもの。普段のイメージとはまったく違うピッチングスタイルは、見ていて面白いなと思ったし、意外でしたね。

――ピッチャーらしい、打者に向かっていく勝気なタイプの性格なんですね。

五十嵐 本人も話していたけど、若い頃は今よりも"とがっていた"ようです。たぶん、いい意味で性格的に柔らかくなったんでしょうね。メジャーに行っていろいろ感じることもあって、考え方も変わったんでしょう。一方で、ずっと変わらないのが「野球が好き」という思い。石川もそうですけど、おそらく家でもずっと野球のことを考えているはずです。

――どういうところにそれを感じますか?

五十嵐 現役時代、和田の肩の状態があまりよくなかった時に、一緒に二軍にいたことがあるんですけど、彼は痛いはずの肩をずっと動かしているんですよ。だから、「肩が痛いなら休めばいいんじゃないの?」って言ったことがあったんです。それでも、彼はずっと肩を動かしていました。

 そしてある日、「昨日、家に帰って鏡の前でいろいろやっていたら、(痛くない投げ方が)見つかったんですよ」って言うんです。それで、実際によくなっていきました。1歩間違えれば、その投げ方が本当はよくないもので、取り返しがつかないことになったかもしれない。それでも、感覚が研ぎ澄まされているからこそ、うまくいったのかもしれないですね。

――丁寧に自分と向き合うことで感覚も研ぎ澄まされ、自分にとっての正解を導きやすくなるのかもしれないですね。

五十嵐 そうだと思います。石川も和田も、目がキラキラしているんです。常に好奇心を持ち続けて、高い目標設定をしてマウンドに上がり続けている。当然、しんどさもあるだろうけど、それを上回る楽しさや勝負の喜びが野球には詰まっている。そういうことを彼らは知っているんですね。野球について話している姿、彼らの目を見ていると、「まだまだやってくれるんじゃないのかな」と思います。

――石川投手、和田投手に、今後期待することを教えてください。

五十嵐 長くやったらやったで、若い頃とはまた違った景色がどんどん見られるはずです。それは、必ずしも素晴らしい景色とは限らない。その分、我慢しなければいけなかったりすることも増えてくるけど、その景色はそこに立った人しか見られないものです。

 それを見ることができるのは、現在では石川と和田だけ。限られた人にしか見られない景色を見てほしいし、そんな2人の姿を見ていたいですね。

【プロフィール】
五十嵐亮太(いがらし・りょうた)

1979年5月28日、北海道生まれ。千葉県の敬愛学園高等学校から、1997年にドラフト2位指名でヤクルトに入団。クローザー転向後、最優秀救援投手や優秀バッテリー賞を獲得したほか、2004年には当時の日本人最速タイ記録となる最速158kmを記録した。その後、MLBに挑戦し2010年からメッツ、パイレーツ、ブルージェイズなどを渡り歩く。2013年に日本球界に復帰し、ソフトバンク、ヤクルトで活躍。2020年のシーズン限りで引退した。現在は野球解説者として多方面で活躍している。

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