日本シリーズで巨人相手に衝撃の4タテ 「野球観を変えた」当時の西武の強さの理由を辻発彦が語る (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

── デストラーデ選手の3試合にわたる初回の先制打はたしかに大きかったですが、辻さんが「日本シリーズMVP」でもよかったと思います。

 ですよね(笑)。もしかしたら、MVPをいただけるのではないかと期待していました。第3戦まで初回に安打を放って、すべて生還。4戦目も得点こそ結びつきませんでしたが、宮本和知から四球を選びましたし......。チームは4勝0敗でストレート勝ち。私が審査員だったら、辻選手をMVPに選んでいます(笑)。

── 第1戦から5対0、9対5、7対0、7対3と、圧倒的なストレート勝ちでした。セ・リーグでは大差でペナントレースを制したのに、日本シリーズでは惨敗。西武の野球に対して、巨人の選手会長だった岡崎郁選手の「野球観が変わった気がする」というコメントが印象的でした。

 覚えています。終わってみたら圧倒的な勝利でしたが、やっていた時はまったく余裕はなかったです。4連敗もあり得るのが日本シリーズですから。でも、岡崎選手の気持ちはわかります。何もできなかったという悔しさなんでしょうね。西武ナインとしては巨人相手に4連勝ですし、しかも私の32歳の誕生日を祝ってくれる形になって最高でした。

── ただ94年の日本シリーズは、長嶋茂雄監督の巨人に2勝4敗で破れました。長嶋監督にとっては初の日本一で、巨人が日本シリーズで西武に勝ったのも初めてでした。巨人ナインは「西武の呪縛から解けた」と口々に語っていました。

 94年は初戦で11対0の大差で下して、幸先のいいスタートを切ったんですが......そのシリーズは槙原が絶好調で、第2戦で完封負け、第6戦でも完投で敗れました。槙原はMVPを獲得したのですが、あのシリーズは本当にすばらしかった。このシリーズのあと、森祇晶監督はユニフォームを脱いだのですが、86年からリーグ3連覇、そして90年からリーグ5連覇。さらに3年連続日本一を2回と、すばらしい監督でした。

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