「選手から嫌われたら自分の器量がなかったということ」ソフトバンク斉藤和巳コーチが語る指導論 (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by 時事

──キャンプに関しては、思うように行なうことができましたか?

「できたと言っていいんやけど、正直もっとできるんちゃうかな、こうしたほうがいいかな、これはどうなんやろなと思うことはありましたね」

──物足りさなさがあった?

「それもありました。ただこれは不満とかじゃなく、自分がいなくなった10年で、流れや習慣みたいなものが随分変わったなと感じました」

──斉藤コーチが現役の頃と比べれば、ブルペンの投球数など随分変わりましたよね。

「それは特に何も思わへんよ。選手が大切なのは結果を出すこと。結果を残すための方法をとっていると思ってるから、そこはみんなを信じています。そのなかで結果が出なかった時は、自分のなかでしっかり言葉にして、定期的に選手に伝えるようにしています」

──改めてホークスの投手陣をどう見ていますか?

「今年に関しては(力が飛び)抜けてる選手がいない分、競争が激しくなるのは当然ですね」

──そのなかで開幕投手にはプロ4年目の25歳、大関友久投手を指名。大きな決断だったのでは?

「いや、全然。自分はキャンプ前からアリやと思っていました」

──開幕の対戦相手であるロッテとの相性も考えたのでしょうか?

「相性もよく言われるけど、それだけで決めてはいないです。相性で開幕投手を選ぶチームは魅力がないでしょ。ホークスはパ・リーグの先頭に立っているという自負を持っている球団。相性で選ぶのは、弱者の考えのような気がします。ただ、もちろん大関を選ぶ過程において、我々のなかで相性の議論もしましたよ。2カード目がオリックス戦というのも考えましたし。でも、大関を最終的に選んだのは相性のよさが理由じゃないのははっきりと言えます」

──斉藤コーチ自身も開幕投手を何度も経験。立場が人を変えると言いますが、大関投手からも開幕投手に指名後、何か変化を感じますか?

「彼の場合、俺とは違うから(笑)。大関は元々真面目で、コツコツできるタイプ。まさしく俺の場合はそういう立場に立たされたことで変わらせてもらった人間。ただ、大関にしてもこの経験でまた次のステージへいける。これは経験者しかわからへん。いいことばかりではなく、苦しみもあると思います。緊張もする。でも、成長に苦しみはつきもの。それをどう乗り越えていくか。また、大関に限らず、たとえば藤井(皓哉)も今季は先発に挑戦するし、板東(湧梧)だって『年間通してローテを守ろう』と必死にもがいている。それぞれ新しい場所に立てば、それまでと違う苦悩は必ずやってくる。そうして次の段階に向かっていける。今年はそんなシーズンにもしたいと思います」

── 一方で、開幕候補には東浜巨、石川柊太という年齢も実績も上の投手もいました。彼らについては?

「本人たちが『開幕を目指す』と言葉にしていました。石川に関しては藤本監督が直接話をされていたので、東浜は自分のほうから話をすると言いました。この先のこととか、いろいろ話をしました。悔しい気持ちもあったかもしれない。それならば、違うパワーに変えていけばいい。というか変えていくしかない。腐るのは誰でもできます。でも、腐ってしまえばそこで終わり」

──東浜投手はキャンプ中、自身の状態も上がらずずっとフラストレーションを溜めていたと自分で認めていました。しかし、キャンプの最後になって表情がパッと明るくなった。"和巳効果"もあったのでは?

「そんなことないんじゃない? 自分自身の調子とか感覚がちょっとずつ出てきたからだと思いますけどね。まあ、その答えは本人しか持ってませんからね。とにかく俺は選手のためになることを思いながら、選手と時間を過ごすだけやから」

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