「イチローを外したらチームがガタガタになっていた」打撃コーチだった篠塚和典が証言する2009年WBC秘話 (3ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by 日刊現代/アフロ

――ちなみに、体勢を崩されてもバットをコントロールして、ヒットゾーンに広角にボールを運ぶイチローさんのバッティングは、篠塚さんのそれを彷彿とさせるのですが、ご自身で似ていると思いますか?

篠塚 そう思う部分はありますよ。ストライクゾーンだけを打つんじゃなく、そこからボール1個、1個半分ぐらい自分のストライクゾーンを広くしてね。やっぱりヒットを多く打って率を残すのであれば、そのあたりまで打てるという自信を持てれば、気持ちも楽になりますから。

 いつも同じスイングで打っていると、確率は悪いんです。やっぱり率を残すためには、スイングスピードをちょっと変えてボールをちょこんと当てたり、体勢を崩して打っていったりね。そういうことは、試合になったら必ず起こること。体を泳がせて打ったり、詰まらせて打ったり、バットの先で打ったりすることを練習でしっかりやることが大切です。バッティングというのは、体が覚えるまでやらないといけません。

――カウントによって意識も変えますか?

篠塚 僕は常に真っ直ぐしか狙っていないんで。真っ直ぐのタイミングで待っていて、いろいろな球種にアジャストしていく感覚です。イチローは自分に有利なカウントの時は、そのピッチャー次第で変化球を狙っていくかもしれませんが、やはり追い込まれてからは常に真っ直ぐ狙いでいって、抜かれたボールを対処するっていうバッティングですよね。

――2009年のWBCの決勝でタイムリーを放った打席がまさにそんな感じでした。ちなみに、イチローさんが不振の時期は誰も話しかけられるような雰囲気ではなかった、という話も耳にしたことがあるのですが......。

篠塚 それに関しては、川﨑がいたことで救われる部分があったんじゃないですか。彼くらいですよ。イチローが打てなくてベンチに帰ってきた時に、励ますじゃないけど、声をかけていたのは。休みの日も練習に一緒に過ごしていましたし、川﨑の存在はイチローにとってものすごく大きかったと思います。

――イチローさんは長いトンネルを抜けて復調して、韓国との決勝戦では決勝のタイムリーを含む4安打を放ちました。

篠塚 あの決勝タイムリーは、川﨑が打たせたようなものですよ。

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