「イチローを外したらチームがガタガタになっていた」打撃コーチだった篠塚和典が証言する2009年WBC秘話 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by 日刊現代/アフロ

――原辰徳監督はイチローさんを代えることはしませんでしたが、篠塚さんも同じ考えでしたか?

篠塚 そうですね。あの時は良くも悪くもイチローが引っ張っていく、イチロー中心のチーム構成でしたから。調子が悪いから下げる、という雰囲気ではなかったですね。仮にイチローを外したら、チームがガタガタになっていたと思います。

――イチローさんが、プロ入り当初から"篠塚モデル"をベースとしたバットを長年使われていたことはよく知られています。大会期間中は選手と打撃コーチという関係でしたが、どんなお話をされましたか?

篠塚 そんなに会話はしていないんです(笑)。基本的に、選手は選手同士で話しますから。あれだけの大人数で行動していますし、たまに話す時があっても覚えていないくらいの会話だったと思います。

――イチローさんのバットと篠塚さんのバットはほとんど同じですか?

篠塚 イチローのバットのほうがグリップが太いですが、全体としては細めでスッとしているような感じで、形はだいたい一緒です。バットといえば、WBCの時ではないのですが、イチローが2002年の日米野球で東京に来た時に少し話をしたんです。

 その時に小学校6年生ぐらいだった自分の息子を連れていたのですが、息子も野球が好きなのでイチローのところに挨拶に行ったんです。それで3人で話している時にイチローが「ちょっと待っててね」ってその場からいなくなって、バットを持って戻ってきました。バットにサインをして息子にくれたのですが、その時に「お父さんと同じバットを使っていてね。このバットには本当に助けられているんだよ」とイチローが言ってくれたんです。

――息子さんも喜ばれたでしょうし、篠塚さんにとっても感慨深い言葉だったのでは?

篠塚 あれだけの選手にそう言ってもらえるのは嬉しかったですし、親としても鼻高々でしたよ。

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