名コーチ・伊勢孝夫は「侍ジャパン、世界一奪還のカギはスモールベースボール」「1次ラウンドにピークを持ってくるな」と力説 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Koike Yoshihiro

 そうした戦いができるのも、安定した投手陣がいるからであり、守り抜く野球こそ侍ジャパンが目指すべき姿ではないだろうか。

 もしこうした戦いを本番で実践するようであれば、選手に明言してから練習に臨まないと、なかなか理解してもらえない。

 だから、バント練習に十分な時間を割き、スチールもただ意識するのではなく、実際に走って感覚を磨かなければならない。短い期間ではあるが、そうした練習が大事になると思う。

【合宿で仕上げる必要はなし】

 そして肝心のバッティングだが、はたして参加するメンバーはどれくらいの状態で合宿に来るのか。いわゆる仕上がり具合も大きなポイントになる。おそらく、よくて7〜8割の状態で集まってくるのではないだろうか。

 長年プロ野球の世界でやっていると、早めに仕上げようと頭では理解しているが、体が例年のペースを覚えているものである。だから、キャンプインからそれぞれのチームで早めのペースでやっていたつもりでも、思ったほど仕上がっていないものだ。

 過去の大会で言えば、第1回での松中信彦や小笠原道大らのベテランは、大会直前の練習でまだ引っ張りきれていないスイングをしていた。それが、本番が始まり、試合を重ねるたびにスイングに鋭さが増し、決勝の頃にはベストに近い状態になっていた。

 よく「日本の打者はスロースターターだ」と言われたのは、当時、こうしたシーズンに合わせた調整が無意識に影響していたのだろう。

 その点、最近の若い選手は帳尻合わせがうまい。無理をしてでも、大会本番に合わせてくる選手がいる。山田哲人などは、まさにそうだ。

 だが帳尻合わせは、その後に必ずしわ寄せがくる。大会では活躍したのに、シーズンに入ったら低空飛行......そうした選手は、大会序盤にピークを迎えたが、終盤から徐々に状態が落ち、そのままシーズン開幕を迎えてしまうためだ。

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