WBC公式球に慣れるまでの苦労を、ロッテOBの清水直行が実体験から語る。「スッと抜くボールが投げづらかった」 (4ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • Photo by Sankei Visual

【若い投手たちはダルビッシュから学べるチャンス】

――これまではWBCでピッチャーが投げる上での課題を聞いてきましたが、逆に大会に出ることで得られるものは?

清水 トップレベルの選手たちが集まるので、キャッチボールをするだけでも得られるものがあると思います。僕は黒田(博樹)さんや上原(浩治)、(松坂)大輔、石井(弘寿)らとキャッチボールをしましたが、「こういうところを意識してるんだな」「ボールの回転がきれいだな」といったことを感じました。

 個々が取り組んでいるランニングの方法なども参考になるはずですし、他の投手に聞いても教えてくれない、なんてことはないと思います。他にも、汗が出る時にどうやってロジンを使っているのかとか、経験のある選手たちにいろいろなことが聞けるのは、必ずプラスになると思いますよ。

――経験豊富なダルビッシュ選手が今回参加しているのは、そういう面でも他のピッチャーに好影響を与える?

清水 大きいですよ。ダルビッシュの変化球の握り方などはめちゃくちゃ参考になりますし、特に若い投手たちは彼から学べる絶好の機会です。僕のなかでダルビッシュは、昔も今も"スーパーピッチャー"。本人にも常にそう伝えているんですけど、彼は「いやいや、僕らがあるのは先輩方をはじめ、みなさんのおかげです」と謙遜するんです(笑)。

 とにかく彼は、投手としてずば抜けています。ボールをリリースする時の感覚、投げる上での心構え、準備など、他のピッチャーたちはいろいろなことを吸収してほしいですね。

――佐々木選手をはじめ、若いピッチャーも多く選ばれています。

清水 昔と比べて野球の国際大会は増えていますし、各大会のボールや環境にも慣れるのは大変かもしれません。ただ、今は昔と比べてアジャストはしやすいのかなとも思います。

 NPBでもいくつかの球場がメジャー仕様のマウンドを取り入れ、公式球は2011年から国際大会使用球に近いミズノのボールに統一されていますしね。昔は、ローリングスのボールを使って3連戦したあと、次の対戦カードではゼットだったこともありました。それでも対応していましたけどね(笑)。

 WBCで世界の強豪国のバッターと対戦できることは、自分を高めていくための絶好のステージですし、今までと違う景色を見ることができるはずです。チームを勝たせることはもちろん、個々のピッチャーのステップアップの機会にしてほしいですね。

【プロフィール】
清水直行(しみず・なおゆき)

1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝府中から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。

プロフィール

  • 浜田哲男

    浜田哲男 (はまだ・てつお)

    千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。

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