オリックス宇田川優希は育成から侍ジャパンへの大出世。覚醒請負人・中垣征一郎が明かす「衝撃の157キロと弾丸フォーク誕生秘話」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

【魔法のドリルで衝撃の157キロ】

── その時には、どんな話を?

「まず、宇田川に素朴な疑問をぶつけてみたんです。『その右足の使いはおかしいと思う。2人でこうやっていこうと決めたことをやろうとしているふうには見えないんだけど、そこはどうなの?』って......そうしたら『僕は右足で地面を押すためにこのほうがいいと思ってやっています』と言う。いやいや、それはそうじゃない、と......」

── そのあたり、専門的な話になるとは思いますが、具体的に教えていただけますか。

「体重移動をする時に右ヒザを外側に割るような動きになったら、足の裏が地面に噛まなくなってしまいます。そうなれば、当然、地面を押すことなどできない。地面をしっかり押そうと思ったら、右ヒザを割る動きはあり得ないんです。でも宇田川は地面を押すために、あえて右ヒザを外へ割る動きをとり入れていました」

── それはなぜ?

「そのほうが体重移動の際の推進力を得られると思っていたみたいです。しかも右足を使ってる感を自分で得られるんでしょうね。でも右ヒザを外へ割ると、右足と左足がバラバラに離れて、最後に回るとき、円の直径が大きくなってしまいますから、回転動作が難しくなる。クッと回れなくなるんです。

 だからもう一度、筋道を立てて話すところに立ち戻ってみました。『オレはこう思う』『いや、僕はこうだと思ってやっていました』『それは違うんじゃないか』と、互いに忌憚(きたん)なく話をしていたら、どうやら目指すところは同じなのに方法論にズレが生じていることがわかったんです。そこでもう一度、ドリルからやってみようじゃないか、ということになりました」

── "世界のナカガキ"が編み出した"魔法のドリル"ですね。

「また、そうやって煽らないで下さいよ(笑)。動作修正のためのドリルです。それを3回。15分くらいのセッションをたったの3回やっただけなのに、いきなりの大爆発です。もう、ビックリしました」

── 大爆発とは?

「いきなり157キロを投げたんです。それも、本人は『えっ、こんなにラクに投げてるのに、なぜ?』という顔をしていました。今まではヒザが外を向いていたせいで下半身の力が分散して、上半身に頼るしかない投げ方だったんです。でも脚を出す方向が定まった結果、力の向きがまとまりました。あとは、どこで手を出すかのタイミングさえつかめば、ボールは自然とストライクゾーンに収まってきます」

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