髙木大成が今も忘れない六本木交差点封鎖。「あの時ほど慶應大野球部の歴史と伝統を感じたことはない」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Ichikawa Mitsuharu (Hikaru Studio)

── 1年の秋にリーグ戦で優勝しています。

髙木 あの時は歴史を感じましたね。野球部の歴史は当時で100年を超えていましたから......真っ先に思い浮かぶのは、神宮外苑から三田キャンパスまで優勝パレードをした時のことです。優勝を決めたのが月曜日だったので、警察が夜の交通量が多い時間帯に六本木交差点を封鎖したんです。あれには驚かされました。歴史と伝統がなければこんなことにはならないよなって......。

── 髙木さんは1年生の時から試合に出ていましたよね。初めてのパレード、さぞ気持ちよかったんでしょうね。

髙木 いやいや、オープンカーに乗れるのは4年生の主力で、僕は1年生だったので歩いていました。平日なので慶應の卒業生だというビジネスマンがたくさんビルの窓から手を振ってくれているんです。日本の政治、経済を担う多くの方を輩出してきた慶應の歴史を感じました。高校ともプロとも違って、大学野球は"半分、大人"の野球だと思います。

 高校野球は甲子園という子どもの頃からの目標を叶えるための集大成、プロ野球は個々の技術を磨いて取り組む職業でした。でも大学は母校を背負う野球です。野球が強いことも大事ですが、社会に出た時に必要とされる人間形成も求められます。プロ野球が誕生する前に高校野球が生まれて、高校野球の前に大学野球が始まった。そういう歴史と伝統はしっかりと継承してほしいし、東京六大学野球のプライドは大事にすべきだと思います。

【慶應大のアイデンティティ】

── その東京六大学のなかで、慶應のアイデンティティはどこにあると思っていますか。

髙木 それは"エンジョイ・ベースボール"に尽きると思います。エンジョイの捉え方は個々で違うんですが、慶應ではそれぞれの人にそれぞれの目標がありました。4年間、慶應で野球をしたいという人もいれば、僕のように慶應で優勝してパレードしたいと思う選手もいる。エンジョイという言葉を、勝つために苦しむのではなく、勝てなくても楽しくやると解釈するチームメイトがいて、衝突したこともありました。

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