吉田正尚の劇的アーチでオリックスが勝利。野田浩司が振り返る勝負の分かれ目「7回のヤクルトの攻撃で...」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Kyodo News

 それが第5戦は展開も手伝って、ヤクルトバッテリーが全打席で勝負にきて、インコースを厳しく攻めるボールもあまりなかった。そうして2対2の同点で迎えた5回、相手先発の山下輝投手が1ボールから投じた真ん中のストレートを仕留めました。これで吹っ切れたのでしょうね。

 9回の打席では初球のストレートを見逃すと、2球目のスプリットをファーストスイングでホームランにしました。甘いところにきたら打ち損じせず、一発で仕留めるところはさすが吉田選手です。

 この2本のホームランで吉田選手はかなり乗ってくると思います。6戦目以降はまた勝負を避けられる場面が多くなるかもしれないですが、オリックスとしては勝負せざるを得ない状況をつくれるかどうか。シリーズの楽しみがまたひとつ増えましたね。

第6戦の先発は?

 また"オリックスらしさ"が見えたのは、第4戦でイニングまたぎの好投を見せた宇田川優希投手と山﨑颯一郎投手をベンチから外したことです。中継ぎ投手の層が厚く、シーズン中からいろんなピッチャーを使ってきました。なので、中嶋聡監督の決断にはそれほど驚かなかったですし、あえて外したことで継投に迷いがなかったですね。

 もし5戦が負けたら終わり......という展開だったらふたりをベンチ入りされたかもしれないですが、彼らが欠けても十分に戦えるだけの中継ぎ陣が揃っています。とくに1戦目、2戦目で打たれた平野佳寿投手、阿部翔太投手が5戦目を無失点で切り抜けたことはものすごく大きかったですね。

 対して、ヤクルトにとってはショックの大きい負けになりました。痛かったのは、7回一死2、3塁から追加点を奪えなかったことですね。あの場面、1点でも奪っていればヤクルトが勝つ可能性は高かったと思います。

 言い換えれば、オリックスはよくあのピンチをしのぎ、8、9回はヤクルト打線を三者凡退で打ちとった。そういうところから、少しずつ流れがきたのかもしれません。

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