ヤクルト連覇を支えた名脇役の成長秘話。山崎晃大朗の「献身力」と奥村展征の「声」はチームに勇気を与え、勝利へと導いた (2ページ目)

  • 島村誠也●文・写真 text & photo by Shimamura Seiya

 つなぎ役に徹しながら、勝負を決する長打も増えた。5月25日の日本ハム戦(神宮)ではライトスタンドへサヨナラ3ラン。バットを短く持っても、芯にしっかりコンタクトする精度を上げれば、外野の頭は越えずとも間を抜くことはできる。そんな手応えを感じたと山崎は言う。

「でも僕の仕事は、塩見をひとつでも先の塁に進めて、山田さんや村上(宗隆)に託すことです。最低限の仕事が、チームにとって最高の結果になればいいという思いは変わりません。僕自身の最高は求めない。それはこれからもやっていきたいと思っています」

チームに勢いをもたらす「声」

 奥村は今シーズンの手応えについて、次のように語った。

「これまで一軍にほぼフルでいることがなかったので、どんな形でも食らいついていったことの結果が出た1年だったと思います。ショート、セカンド、サードをしっかり守ることができれば、一軍に食らいついていけるんじゃないか......。そう思いながらやってきました」

 出場機会こそ少なかったが、試合前、試合中は"声"を出し続けた。声を出すタイミングについては、嶋基宏や川端慎吾、坂口智隆といった「経験豊富な選手を見ながら勉強しました」と話す。

「チームが苦しい時は、ただ大きい声を出してもうるさいだけですし、そういう時はできるだけチームが盛り返せるような声を出せたらいいなと。逆にチームが乗っている時は、もっともっと乗っていけるような声出しをしようとやってきました」

 よく発するのは「一戦必勝!」。奥村が長く大事にしている言葉で、高校野球スタイルを取り入れた。山田が「嶋さんや奥村の声で勝ってるんじゃないかというくらい、ベンチの雰囲気はいいです」と言うほどである。山崎も「ベンチが暗くなりそうな時でも、声を出してみんなを勇気づけてくれる。チームに欠かせない選手です」と話す。

「僕は相手にプレッシャーをかけるというよりも、チームがいい方向に進んでいくことを心がけて声を出しているのですが、その勢いが向こうにも伝わっているのはいいことだったなとは思っています」(奥村)

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