斎藤佑樹「ハンカチ王子と呼ばれるのは好きではなかった。野球の実力じゃないところにフォーカスされた」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sankei Visual

 大会の最中って宿舎にずっといるから、周りの環境がわからないじゃないですか。大阪にいる間は試合の合間に甲子園までほかのチームの試合を観に行ったり、甲子園の周りにあるショッピングモールでみんなと一緒に買い物をしたこともありましたけど。

 新聞でもテレビでも取り上げられているのは知っていました。けど、大阪にいる間だけの話だと思っていたんです。東京に戻ったらそんなに騒がれることでもないだろうって......でも、東京でもものすごい騒ぎになっていたらしく、のちにその真っ只中に放り込まれた時には、さすがに楽しむという次元じゃなくなっていました。

 やっぱり、選手として見てほしかったという気持ちがあったんだと思います。僕は小学生の頃から有名になりたかった。でもそれは野球選手として活躍することが前提です。なのに甲子園でハンカチ。

 ハンカチを使ったら、野球の実力じゃないところにフォーカスされた。これってたまたま僕があのハンカチを使ったからで、注目されたんじゃないかと思ったのかもしれません。

甲子園通算2本目のホームラン

 3回戦の福井商との試合は、あまり苦労した記憶がありません。覚えているのは僕が打ったホームラン(笑)。5回に1点を先制されたあと、4番の後藤(貴司)が同点スリーベースヒット、5番船橋(悠)の勝ち越しツーランホームラン。で、6番の僕がセンターのバックスクリーンへホームラン。アウトコースの真っすぐ、一点張りで振っていったんですよ。気持ちよく振り抜けた感触が残っています。

 春のセンバツでも、レフトへのホームランを打っているんですけど(関西との2回戦の引き分け再試合)、春も夏も両方ともヤマを張って打ったんです。でも闇雲に狙い球を絞っていたわけではなく、いつしか相手のクセが見えてくるんですよね。これは真っすぐ、これはスライダー......で、もしスライダーが抜けてきたら、こういうイメージで振ればホームランを打てるなとか、そうやってヤマを張って、実際に打ちました。

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