チーム最多登板で防御率0点台。DeNA伊勢大夢が「根拠なき自信」を失って得たもの (4ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Koike Yoshihiro

 現役時代の三浦大輔監督もよく「疲れた時に、いかにいいボールを投げられるかが大事」と言っていたが、苦しい時にその投手の本質が見えるものだ。伊勢は続ける。

「勝ちゲームで投げていくには、疲れたから3連投はできませんでは信頼を得ることはできません。ましてやクローザーだったら4連投もありえるでしょうし、そこを目指している以上、言い訳することはできません」

 伊勢の運用についてはチームも心得たもので、じつはあまり連投をさせてはいない。しかし今後、戦況が緊迫してくれば連投も辞さないだろう。その時にいかなるピッチングを伊勢がするのか注目だ。

「自分はブルペンで一番若手ですけど、引っ張っていこうという気持ちは一番出しているつもりです」

 実力はもちろん自覚も持ちはじめ、今季の目標だった「勝ちパターンの輪のなかに入ること」も達成ができた。あとはかねてから公言しているクローザーになることだが、着実にその道を歩んでいる手応えはあるのだろうか。

「クローザーとなるとまた話は別ですね。現状においてはヤスさんが譲らない状況がチームにとって勝っていることを意味しますし、そこは近くにいて肌で感じ学ばせてもらっています。ただヤスさんも人間なので調子が悪い時もあるでしょうし、コロナも油断できません。そういう時、確実にピースとして埋まることができるように準備していきたいと思います」

 まだまだ途上の過程。誰かの代わりではなく、「ファーストチョイスとしてクローザーに抜擢される時がくるといいですね」と声をかけると伊勢はにこりと微笑んだ。はたしてその日はいつ訪れるのか、絶対的な存在になった伊勢の姿を楽しみに待ちたい。

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