投げすぎと投げなさすぎのボーダーラインは? ステージごとで変わる「野球ヒジ予防」の認識 (4ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 小中学生で野球ヒジを患ったままプレーし続けると、最悪、野球人生を棒に振りかねない。本来、子どものヒジはそれくらいデリケートに扱わなければいけないものだ。島村医師が続ける。

「高校生になると、半分以上はもともと剥離して治らない跡があり、そこを痛めていることが多い。だから小学生レベルでは、壊して治らないまま上の年代に上がるのではなく、きたるべき高校野球や上のレベルに備えてほしい。

 高校生になって剥離した跡を再び痛めると、最悪、トミー・ジョン手術をしなければいけなくなる。でも、多くの場合は全身のコンディションが悪くてヒジがより痛くなっているので、コンディションさえ整えてあげればその状態でもプレーできることもあります」

 こうした知識は、野球少年少女のコーチや保護者にとって不可欠なものだ。子どもの頃にヒジを痛めて無理にプレーし続けると、高校生以降に"再発"して致命傷になるリスクがある。だから、子どもの頃は大事に育てていかなければならない。

 それから10代半ばになって甲子園をかけて戦う年代に突入すると、身体の成長はある程度落ち着き、純粋に楽しくてプレーしていた頃とはさまざまに事情も変わってくる。つまり、小学生と高校生では考え方にも変化が生じるわけだ。

「高校生は、多少は自分のマックスを超えるようなこともしておくべきだと思います。(最近は)あまりにも投げなさすぎじゃないかと感じますね」

 吉見がそう言えば、島村医師も「あまり過保護にしないほうがいい」と話した。

 ふたりがそう語る理由は、高校年代の選手たちにとって、野球は"人生を切り拓く手段"という意味合いが増してくることにある。

第6回につづく

(一部敬称略)

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