猛バッシングからの大歓声も。新井貴浩など現役晩年に古巣に戻って輝いた男たち

  • 紙井昇●文 text by Kamii Noboru
  • photo by Kyodo News

 昨年12月9日、DeNAが楽天を戦力外になった藤田一也の獲得を発表した。今季プロ17年目を迎えるベテランにとって、2012年以来の古巣復帰となる。

 10年ぶりの古巣で期待されるのは、内野のスーパーサブとしての立ち位置だろう。だが、牧秀悟、森敬斗ら、次代のDeNAを担う若手たちに自身の経験と知識を還元するなど、違った形での貢献も期待される。

 現役生活の晩年に古巣に復帰するケースは、今回の藤田に限らず、過去にも例がある。昨シーズンで現役生活に終止符を打った松坂大輔もそのひとりだ。

【古巣で現役を終える幸せ】

 2007年から8年間のメジャー生活を終え、2015年から3年契約で年俸総額は12億円という大型契約でソフトバンクに入団した松坂だったが、登板は3シーズンでわずか1試合のみ。契約満了をもって退団し、入団テストを経て中日に移籍した。

 中日では移籍初年度の2018年に11試合に登板して6勝4敗の成績を残し、カムバック賞を獲得。しかし、翌年は春季キャンプで右肩を再び故障。後半戦に一軍復帰したものの、登板はわずか2試合に終わり、同年限りで退団となった。

 12月に中日からの自由契約が公示されると、その翌日に西武が獲得を発表。2006年以来14年ぶりの古巣復帰にファンは歓喜した。2020年は脊椎内視鏡頸椎手術を受けるなど、一軍登板はなし。2021年も慢性的に悩まされていた右手のしびれ、首の痛みが良化せず、7月に現役引退を発表した。

 西武復帰後はケガに苦しみ本来の力を発揮できなかったが、引退試合ではプロ入り時に背負った18番をつけて現役最後のマウンドに上がった。

 その松坂を旗印とする、1980年度生まれの「松坂世代」。その世代で2020年にプロのユニフォーム脱いだ野手の渡辺直人も、古巣で現役を終えたひとりだ。

 楽天が創設間もない2006年の大学・社会人ドラフト5巡目で指名され、プロに進んだ。1年目から119試合に出場し、遊撃のレギュラーに定着。黎明期の楽天を支えてきたが、2010年オフに金銭トレードで横浜へ移籍。契約更改後の異例のトレードに、ベテランの山﨑武司は疑問をなげかけ、同期入団の嶋基宏が涙を浮かべるなど、大きな波紋を呼んだ。

1 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る