「天才が努力すれば結果はついてくる」。ヤクルト・川端慎吾は首位打者から「代打の神様」になった (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

「いい走りだ。怖いくらいだ!」

 森岡良介コーチがそう叫ぶと、その先にはライトからレフトへ全力疾走しながらアメリカンノックを受けている川端の姿があった。

 8月、ヤクルトは坊っちゃんスタジアム(愛媛)で巨人との試合を主催。そこには「松山での試合に一軍にいることが、今年の大きな目標のひとつでした」と語る川端がいた。

「オフの半分くらいは(自主トレで)松山にいて、多くの人たちに支えられ助けていただきました。なんとかここまでこられたことに感謝していますし、元気な姿を見せたいなと。松山に来ると自然に体が動く......本当にそんな感じがします」

 コンディションが戻ったことで、結果も取り戻してきた。

【チームを6年ぶりのリーグ制覇へと導いた脅威の代打成功率】

 今シーズンは91試合に出場し、打率.372の好成績を残した。代打での安打数は歴代記録にあと1本と迫る30安打を重ねた。しかも得点圏打率は.421。川端のヒットはチームにいくつもの勝利をもたらし、2年連続最下位からの脱出はおろか、6年ぶりのリーグ制覇へとつながった。

 川端はリーグ優勝を決めると、真っ先に日本シリーズでソフトバンクに完敗した6年前の悔しさを思い出したという。

「チーム一丸となってがむしゃらに全力でプレーして、ここまできたら痛いかゆい関係なく戦力になれるように頑張りたい」

 ヤクルトは巨人とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルを2勝1分で勝ち上がり、日本シリーズでも4勝2敗でオリックスを下し、20年ぶりの日本一に輝いた。

 川端は代打で、CSで2打席、日本シリーズでも2回打席に立った。すべてが息詰まる珠玉の対決で、トータル2打数1安打2四球2打点。なかでもCS第2戦での菅野智之との対決は、川端の打撃がすべて詰まった"結晶"のようだった。

 6回裏二死満塁、ヤクルトのリードはわずかに1点。今年は早いカウントで仕留めることが多い川端だったが、菅野との対戦ではあっという間に2ストライクと追い込まれてしまった。

 川端はこの打席をこう振り返った。

「すぐに追い込まれてしまったんですが、確率が高いのはフォアボールかなと。追い込まれてからファウルを打つことは昔からやっていたので、自分のなかでは苦ではありませんでした」

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