優勝したオリックス不動の1番・福田周平。二軍降格時「中嶋監督からあの言葉がなかったら、今の僕はなかった」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 福田はその「心地いいボールの見え方」について、独特の感覚を語った。

「心地いいというのは、たとえばノーストライク、スリーボールの時って、ほぼ打たないじゃないですか。ベンチから『打つな』のサインが出ることも珍しくない。そういう時って打ちにいかないと決めていますよね。だからただ見逃すだけなのに、ボールが遅く見えることがあるんです。この感覚は高校時代から感じていて、この見逃し方、すごくいいなって思っていました。だからいい状態の時は、"打ちにいってないのに打つ"みたいな......矛盾してるんですけど、そういう感覚になれます。

 打とうとして打ちにいくと、僕のほうに無駄な動きが出てしまう分、差し込まれてボールが速く見えてしまう。打たないけど打つ感覚の時は無駄な動きがなくなって、体がピタッと止まる感じがあるので、球がよく見える。その感覚が出てきた時、いいタイミングで一軍に呼んでもらったんです」

 5月11日、福田は一軍に昇格。東京ドームで行なわれた(北海道日本ハム)ファイターズとの一戦で "1番センター"を任される。福田は初回、金子弐大のスプリットをいきなりライト前へ弾き返して出塁、すかさず盗塁を決める。3番の吉田正尚のセカンドゴロで三塁に進んだ福田は、4番の杉本が打った左中間へのホームランで先制のホームを踏んだ。

「一軍に上がった時、いいスタートがきれたので、その流れのまま交流戦に入ることができました。過去、交流戦は僕自身、けっこう結果がよかったので、いい感じで入っていけるぞと勝手にイメージをつくっていたんです。チームも交流戦は強かったし、その勢いに便乗して僕もいい感じを持続できたのかなと思います」

 5月に福田が一軍に昇格してからの105試合、福田が1番を外れたのは4試合だけ。福田が1番に定着したことが、バファローズの攻撃にいいリズムをもたらした。福田は1番の心得についてこう話した。

「1番は誰よりも多く打席に立てますから、楽しいですね。下位を打っていた時はまだ回ってこないのか、もっと打ちたいなという感覚でしたから......凡打になろうがヒットになろうが、1打席目が終わると緊張が解けます。それくらい、1番としての第1打席は緊張するんです。試合の流れをつくる責任がありますからね」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る