セ・リーグ初のMVP捕手に聞く。「打てる捕手はいかにしてつくられるのか」

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 シーズン終盤の追い上げで巨人と熾烈な3位争いを繰り広げている広島だが、チームに勢いを与えているのが若手野手陣だ。

 2018年ドラフト1位の小園海斗は上位打線を任されてリーグ10位の打率.291を記録するなど、ショートのレギュラーに定着した(今季の成績は10月20日時点、以下同)。同年3位で入団した林晃汰もサードやファーストで起用され、規定打席には未達ながら打率.278、9本塁打と持ち味の打棒を発揮している。

 そして進境著しいのが、2016年ドラフト4位の坂倉将吾だ。今年は本職の捕手に加えてファーストでも出場し、9月7日には規定打席に到達して首位打者に浮上。9月中旬から当たりが止まった時期もあったが、現在はリーグ4位の打率.311をマークしている。

成長著しい広島・坂倉将吾(写真左)と2019年にMVPを獲得した西武・森友哉成長著しい広島・坂倉将吾(写真左)と2019年にMVPを獲得した西武・森友哉この記事に関連する写真を見る 2016年からリーグ3連覇を飾った広島では世代交代が進むなか、キャッチャーは焦点のひとつだ。佐々岡真司監督は坂倉の起用法についてこう話していた。

「まだ1年間経験したことがない。キャッチャーもファーストもしてというなか、疲労もあると思う。重要なところを頑張ってくれている選手なので、そうそう簡単に外すつもりはない。ここを乗り越えて、またひとつ成長があると思う」

 もともと打撃に定評がある坂倉は昨年81試合で打率.287を記録し、捕手としては51試合に先発出場した。今季は捕手として47試合、一塁手として40試合でスタメンに名を連ね、指名打者として3試合に先発起用されている。

 キャッチャーは試合前の準備も含めて"最も負担のかかるポジション"と言われるなか、プロ野球でマスクをかぶり続けながら打撃成績を残していくのはどれくらい大変なことなのか。1982年にセ・リーグで初めて捕手として年間MVPに輝き、"打てる捕手"として活躍した中尾孝義氏はこう説明する。

「1試合だけなら先発ピッチャーが最も体力的に消耗すると思いますが、キャッチャーは毎試合出るので疲れがどんどんたまっていく。そういう意味で一番体力を消耗するポジションです。僕自身は優勝がかかってくるとリードのことしか頭になく、打撃は二の次となってただただホームランを狙っていました。そうすれば、歩いて帰ってこられますから(笑)」

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