「くよくよしている場合ではない」小林誠司が正捕手返り咲きへやるべきこと (4ページ目)
リードとは、さまざまな要素が複雑に絡み合う。だからこそ面白く、難しい。小林が捕手として、リード面でとくに大事にしていることは何か。そう聞くと、小林は「まずはチームが勝つこと」と答え、さらに続けた。
「その日その日、投げてくれるピッチャーの100パーセントの力を出せるようにサポートすること。ただボールを受けるだけじゃなく、ピッチャーの様子や体調を常に見て、状況や試合展開を見ながら声をかける。それがキャッチャーの仕事だと思います」
そして小林は「僕も一生懸命になりすぎて、その試合だけ見ちゃうこともあるんですけどね」と笑った。
数字には表れない献身。それがあるからこそ、同年齢の菅野智之をはじめ、小林への厚い信頼を口にする投手が多いのだろう。
このオフ、小林は広陵高の10年後輩である中村奨成(広島)と自主トレを組んだ。ファームでくすぶる中村に、小林は「腐ってはいけない」と助言したという。
だが、その言葉は自分自身に言い聞かせる言葉でもあったのではないか。そう尋ねると、小林は柔和な表情のままこう答えた。
「ケガをして悔しいし、そこで投げ出してもどうにもならないし、でもやるべきことは必ずあると思うんです。ケガをしても声をかけてくれる人、サポートしてくれる人、応援してくれる人はたくさんいるなと感じました。そういう方のためにも、自分のためにも、もう一度、全力でプレーでしてグラウンドで表現したい。
そのためにはトレーニングも人一倍やらないといけないし、バットも振らないといけないし、ボールも投げないといけないし、走らないといけない。やることがいっぱいありすぎて、くよくよしてる場合ではないんです」
「ケガをしても応援してくれる人」に、今年どんな姿を見てもらいたいか。最後に小林に問うと、晴れやかな表情でこう返してきた。
「体はまったく問題ないですし、すごく元気なので。2021年は本当に泥臭く、死に物狂いでグラウンドを駆け巡りたいです。一軍の試合でチームに貢献できるようにアピールしていくので、そんな姿を見ていただけたらと思います」
甘いマスクには似つかわしくない土の匂いのする言葉に、小林誠司の強い覚悟が滲んでいた。
4 / 4