「くよくよしている場合ではない」小林誠司が正捕手返り咲きへやるべきこと (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 だが、打撃練習を見ていると小林のコンタクト能力は決して低くない。長打力は乏しいにしても、バットの芯で正確に打ち抜く技術は持っている。その点を本人にぶつけると、苦笑交じりにこんな答えが返ってきた。

「自分のなかではバッティングの自信はあまりないんですけど、石井琢朗コーチや元木大介コーチには『力があるのにもったいないよなぁ』とか『メンタルが弱いのかなぁ』なんて言ってもらえるんです」

 やはり、小林の基本的な打撃能力は首脳陣から一定の評価を受けているのだ。それでは、なぜ結果が出ないのか。小林は続ける。

「スイング自体は悪くないしコンタクト能力はあるんだけど、打席に入った時の考え方、気の持ちように問題があるのかなと。その点を石井さんや元木さんは話してくださるので、あとは自信を持って打席に立てるようにしないといけないですね」

 春先に強いというデータもある。2017年のWBCでは打率.450の大活躍でラッキーボーイになり、3・4月の打率は2018年が.357、2019年が.378と好結果を残している。昨年もコロナ禍の影響で開幕がずれ込んだが、オープン戦での状態はよかったという。

「春はよくてもパタッと打てなくなるのがバッティングなので。そこで『何で打てないのか?』というものを突き詰めていかないと、また同じことの繰り返しになる。そこは自分でしっかり考えてやらないといけないと思います」

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 小林誠司という野球選手は入団以来、毀誉褒貶にさらされてきた。いや、正確に言えば「毀」「貶」のほうが多かっただろう。阿部慎之助という球史に残る名捕手の後釜となり、評論家からリード面を酷評されることも珍しくなかった。そして今や、正捕手の座を新鋭に奪われようとしている。報われない境遇を嘆いても不思議ではないように思えるが、小林はいつも前を向いている。

「リードに正解はないですし、いろんなことを言われるのは『そういう考え方もあるんだな』と思っています。何か自分のプラスに変えていけたらなと」

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