赤星憲広が「神走塁」の3人を比較。技術度、センス、将来性を語った (2ページ目)
──特に接戦では、チームにとって非常に心強い存在でしょうね。
「今季の巨人は『増田で勝った試合』がとても多くなっています。"神走塁"として話題になった、7月19日のDeNA戦がいい例です。2-3と1点を追う9回表1死、1塁ランナーの坂本(勇人)の代走で登場し、盗塁に成功。2死二塁となり、丸(佳浩)の二塁への内野安打の間に本塁に突入して同点。その後の逆転へとチームを導きました。
おそらく三塁を回った時点で、キャッチャーと打球が捕球された位置を確認したと思いますが、その後でまた走りを変えているんです。セカンドからの送球とキャッチャーの位置がズレたことも見ながら、タッチをかいくぐる左手1本のヘッドスライディング。かなり技術が高い走塁でした。今はチームの信頼度も相当高いでしょうね。たとえアウトになっても『増田でもアウトなら仕方ない』というムードに変わっているでしょう」
──パ・リーグの盗塁数1位(27個)の周東選手は、失敗数が3で盗塁成功率.900と高い数字を残しています。
「周東は、プレミア12でも見受けられたんですが、僕が見ていて『走ってもいいのに』という場面で自重することが多い印象があります。まったくスタートを切らないこともあれば、別の試合では1球目であっさり盗塁を決めることもある。それがセンスというか、彼なりの基準や感覚があって、塁上で相手バッテリーと駆け引きをしているんだと思います。
日本ハムの西川(遥輝)に近い考え方なのかもしれませんね。以前、西川と対談した際に、成功率を重視して決して冒険をしないことを明言していましたから。それが"現代の野球"の傾向なのかもしれません」
──その傾向とは?
「『盗塁は、失敗したらチームにとって大きな痛手になる』という考え方ですね。他にもバントを重視しないといった、オークランド・アスレチックスが用いた基準が、日本のプロ野球でも当たり前になってきています。以前は盗塁も、アウトになってもチャレンジすること自体がチームに勢いをもたらす側面もあったのが、『成功率が高くなければいけない』という考えに変わってきています。
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