今季中のNPB復帰は消滅も、西岡剛「野球を続けることに変わりはない」 (4ページ目)

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • photo by Okabe Mitsuyo

── あらためて、独立リーグでプレーして感じることはありますか。

「NPBは"非現実的"な世界だったと思っているんです。球場にはきれいなロッカーがあって、シャワールームがあって、試合前にシャワーを浴びてスッキリできる。サウナもある。飲みものは飲み放題、食べものだって好きな時に食べられる。でも、独立リーグでは球場に行くと、自動販売機やコンビニで小銭を出して買うわけですよ。それってすごく現実的じゃないですか。自分の飲みものを自分のお金で買うのは当然。そういう経験を、野球をしながらできるっていうのはすごく幸せだと思うんです。野球を引退したら、ある意味、社会人1年生ですよね。どこかの会社で営業するようになるのか、球団に残るのか、解説者になるのかわからないですけど、どれも現実の世界に戻されますよね。それを、野球しながら経験できているのがラッキーだなと」

── 一般社会の常識を知らないまま年齢を重ねて、引退してから戸惑う人も多いでしょうからね。

「経験してないからわからないんですよ。わからなくて当たり前。でも、NPBにいた時の僕は、それがとくに欠けていた選手だと思っているんです。大学、社会人を経験している人は、常識を知っている人も多いですけど、僕みたいに高校からすぐプロに入った選手は、『これがオレの生きていく世界なんだ』って思ってしまうんですよ。で、いつか引退して、現実社会を初めて経験するんですよね。その時、野球ではない仕事をしながら常識を勉強していくって、すごく大変だと思うんです。年下が上司になることもあるわけですから、それに耐えるのもすごくしんどいことだと思うし。そういうことを、野球を通じて経験できているっていうのは、ホントにラッキーだなって思います」

── 大人になられましたね(笑)。

「ハハハ」

── 言葉づかいも丁寧になった気がします。

「NPBの時は取材も多いから、対応が雑になっていました。しゃべることも同じようになってくるし。でも、ここではたまにしか取材もない。今まではカメラが何台も並んで練習風景を撮られて、ベンチにもマスコミの人がいっぱいいて......そういう環境がしんどい時もありました」

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