矢野燿大、与田剛はどのタイプか。
名コーチが説く「いい監督の条件」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載第36回(最終回)

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 今シーズン、セ・パ両リーグ合わせて5人の監督が代わった(代行監督から正式に監督に就任した楽天・平石洋介監督を含む)。巨人の原辰徳監督は4年ぶりの現場復帰で、オリックスの西村徳文監督も過去にロッテで采配をふるった経験がある。一方、これまで一軍の監督経験がないのが、阪神・矢野燿大(あきひろ)監督と中日・与田剛監督のふたり。彼らが指揮官としてどんな野球を見せていくのか興味深いが、はたして「いい監督の条件」とはどんなものなのか。これまで選手、コーチとして多くの監督に仕えた伊勢孝夫氏に語ってもらった。

昨シーズン最下位の阪神をどう立て直すのか、矢野監督の手腕に注目だ昨シーズン最下位の阪神をどう立て直すのか、矢野監督の手腕に注目だ いい監督の条件──それは「勝つ」のひと言に尽きる。ベテラン監督だろうが新人監督だろうが、要は「この人について行きたい」と思わせることができるかどうかである。極端な話、人間的には大嫌いでも、勝てる監督なら選手も我慢してついてくる。逆に、人としての魅力はあっても結果を出さないと選手はついてこないものだ。

 チームが好調な時というのは心配ないが、問題は勝てなくなった時、チームの状態が悪くなった時にどう対処できるか。その時に監督の力量が問われる。いい監督、勝てる監督というのは、こうした非常時に直面しても引き出しの多さでそれを乗り切ることができる。

 では、具体的に引き出しとはどのようなものなのか。もちろん、作戦なども重要だが、一番はやはり選手起用だ。

 監督のタイプを大別するとしたら、次の2つに分けることができる。

1. 戦い方に強い持論を持ち、そのスタイルに選手をはめていくタイプ

2. 選手の顔ぶれと力量に応じて戦い方を変えていくタイプ

 1の代表例は、やはりノムさん(野村克也氏)だろう。"ID野球"を掲げ、キャンプから選手をミーティング漬けにして、試合以前の心構えから教育していった。

 一方、2の代表例は、近鉄、オリックスで指揮を執った仰木彬さんだろう。近鉄の監督時代はパワフルな選手たちの個性を最大限に生かし、"いまえ打線"を形成し奔放な野球を展開した。またオリックスの監督時代は、相手投手との相性を重視してスタメンを決定する"猫の目打線"で戦い、リーグ連覇を成し遂げた。

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