踏み忘れ、10万号...お騒がせマレーロが今季は30本打つと言う理由 (3ページ目)

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 マレーロはこれまでの経験を生かし、自分自身をコントロールした。

 幸いその試合でオリックスは勝利し、チームメイトはマレーロの失態を責めるどころか、笑って済ませることができた。

 翌日、マレーロはまたスタンドに放り込んだ。日本での第1号となるように、今回はホームベースの真ん中を両足でしっかりと踏んだ。マレーロはその後もホームランを量産する。

中でもシーズン20本目となるホームランは特別なものとなった。なんと、日本プロ野球通算10万号目のホームランだったのだ。もしマレーロが、6月9日の試合でホームベースを踏み忘れていなければ、メモリアルアーチはほかの誰かが放っていたに違いない。

 さらに昨シーズン、マレーロはオリックスで20本、ジャイアンツで1本、そして3Aでの2本を足すと、合計23本塁打。これは2006年と2016年に記録した自己最多に並ぶ数字だった。もし幻の1本が加わっていたら......自己最多記録となるはずだったのだ。

 それでもマレーロは前向きに考えている。昨年、日本のプロ野球を経験したことで、新たな感覚を身につけた。30本を打つために、オフには新しい練習法を取り入れた。

「走り込みに重点を置きました。走ることによって持久力が養われ、長いシーズンを戦い抜くことができるのです。パワーは足腰の強さから生まれます。強靭な肉体を持った選手は、すごいスイングをします。これはメジャーを見ていても感じていました。最近は、ただ大きいだけの選手は見なくなりました。みんなしっかりと体を鍛えています。

 私も以前は、体の柔らかさであったり、機敏さであったり、そういった部分にそこまで重点を置いていませんでした。それに体重も重かった。今は体を研究し、これまでと違った体づくりができるようになりました。それによっていいスイングになりました」

 マレーロは、ここまで(5月7日現在)リーグ2位の8本塁打を記録している。かつてメジャーで長距離砲として期待された男が、本当の意味で才能を開花させるときが来るかもしれない。

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