ライバルたちが語る「大谷翔平の160キロ」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そして6回裏の第3打席は、打点1を挙げたが151キロのストレートに一塁ゴロ。この後、バルディリスの打席で大谷は160キロを出した。

「ただのピッチャーじゃないですよね。(バルディリスの時は)158キロ、160キロとスピードが上がっていった。一気にギアを上げてきましたね。力を入れるところと抜くところをわかっている。抜くといっても普通に150キロは出るんですけどね(笑)。柔と剛の使い分けができる器用さがありますね」(後藤)

 160キロを体験したバルディリスは試合後、大谷について次のように語った。

「(160キロについて)初球に158キロが出た時点で、正直驚きました。昨年も対戦しましたが、あれだけ速い真っすぐで勝負したことがなかったので……。確かに、160キロは速いと思いますが、自分としてはクルーン投手の方が速く感じました」

 今季、大谷に2連敗。5月13日にはプロ初完封を許した西武。正捕手の炭谷銀仁朗は捕手目線から大谷評を語ってくれた。

「速かったですね。ズドンという感じではなく、伸びのある真っすぐでした。それに変化球も良かったです。ただ、変化球はまだコントロールがアバウトなので、今後は真っすぐに合わせて、甘いボールをどんどん狙っていこうという感じですかね。打者としていちばん厄介なのがコントロールのいいピッチャー。大谷投手は、そこまでのコントロールはまだないけれども、あの速い真っすぐがあるからファウルでカウントを稼げるし、もちろん三振も取れる。あくまでもあの真っすぐを軸とした配球になると思うんですよね」

 また、ストレートについては次のように語った。

「大谷投手の真っすぐは、まだ打てるチャンスのある真っすぐなんです。ボールの質は素晴らしいのですが、投げ方と実際に来るボールが一致するんです。たとえば、腕の振りが早いのにボールが遅いとか、フォームはめちゃくちゃゆっくりなのにそこからパーンと来るとか。大谷投手の場合、打者がタイミングを崩されるようなフォームではないんです。過去に対戦した中では、(藤川)球児さんの時はあの真っすぐを打つのは無理やと思いました」

―― プロの打者であれば、160キロは打てないボールではないと。

「僕の感覚ですが、149キロと150キロはイメージが違いますが、150キロより先は一緒ですよ。ただ速い、という感覚ですね。160キロは実際に見ていないのでわかりませんが、全球そのスピードではないですからね。打席の中で160キロがひとつ来たぐらいだと、速いなという感覚はあっても155キロとかと同じなのもしれないですね。たとえば、試合で4打席対戦して、10球真っすぐを見るとします。僕らもプロなので目が慣れれば空振りはしないようにできます。ただ、そこに変化球であったり、投球テンポや抜群のコントロールであったり、バッターが嫌がる要素が少しでも入ってくると、あの真っすぐはもっと生きてくるんじゃないかと思いますね。5月にウチは完封されましたが、基本は5~7回までしか投げていないですよね。今後はもうちょっと長いイニングを投げられるようになると思いますし、いろんな部分でレベルアップしてくると思います。“打つのは無理”というピッチャーになる可能性は十分にあると思います」

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