ありがとうジョーブ博士。日本球界にもたらした351勝の功績 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by AP/AFLO

 ジョーブ博士によって、選手生命を延ばした選手は他にもいる。中込伸(阪神)は、入団2年目の1990年にジョーブ博士によって右肘の手術を受けている。翌年にプロ初勝利を挙げると、阪神を退団する2001年までに41勝2セーブをマーク。その後、台湾球界に移籍し、2005年まで現役を続けた。

 そしてまた、桑田真澄(巨人)もジョーブ博士によって選手生命が延びたひとりだ。桑田は1995年6月の阪神戦でダイビングキャッチを試みた際に右肘を強打し、側副靭帯断裂の重傷を負った。桑田は渡米し、ジョーブ博士によって左手首の靭帯を右肘に移植する手術を行なった。

 復帰まで661日の期間を要したが、1997年4月6日の復帰試合で、マウンドにひざまずき、右肘をプレートにそっと置いた姿には感慨深いものがあった。桑田はその年に10勝7敗の成績を残すと、翌年は16勝5敗で最多勝争いを演じた。また、2002年に最優秀防御率のタイトルを獲得。その後、2006年オフに巨人を退団し、メジャー挑戦を表明すると、2007年6月に39歳にしてメジャーデビューを果たした。結局、メジャーでは1勝も挙げることはできなかったが、手術後に挙げた勝利数は64勝。それよりも40歳まで現役を続け、メジャーにまで挑戦できたことは桑田にとっても大きな財産となった。

 かつて成功率5%未満だったトミー・ジョン手術は、その後、医学やリハビリの進歩もあり、21世紀に突入すると90%まで高まったと言われている。日本でも、ここ数年は実に多くの選手がトミー・ジョン手術を受け、復活を果たしている。上記4人の他にトミー・ジョン手術を受けた日本人投手で、手術後に勝ち星を挙げた選手は以下の通り(※)

※成績は2013年シーズン終了時のもの

藤井秀悟(横浜DeNA)/2003年に手術
手術後の成績...登板197試合、58勝64敗

藤田太陽(元ヤクルト)/2003年に手術
手術後の成績...登板136試合、10勝6敗4セーブ/2013年に現役引退

館山昌平(ヤクルト)/2004年に手術
手術後の成績...登板239試合、78勝52敗10セーブ
※2009年には16勝を挙げ最多勝を獲得

五十嵐亮太(ソフトバンク)/2006年に手術
手術後の成績...登板234試合、14勝9敗18セーブ

江尻慎太郎(ソフトバンク)/2007年に手術
手術後の成績...登板191試合、6勝8敗1セーブ

田澤純一(レッドソックス)/2010年に手術
手術後の成績...登板111試合、6勝5敗1セーブ

松坂大輔(メッツ)/2011年に手術
手術後の成績...登板18試合、4勝10敗

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