完全復活を目指す斎藤佑樹にいま必要なこと (2ページ目)

  • 小池義弘●文 text by Koike Yoshihiro

 ブルペンでの球数ですが、1回で200~300球を投げる必要はありません。僕は現役時代、キャンプインからオープン戦が始まるまでにトータルで800球くらい投げていました。日本ハムにいた時のダルビッシュ有も、大体それぐらいでした。たくさん投げる選手でも、1000球を少し超えるくらいが目安だと思います。

 よく新聞などで「キャンプでの目標は2000球の投げ込み」などという文字を目にすると思いますが、ハッキリ言ってそれはやりすぎです。疲れた状態で投げるとフォームを崩す原因となり、球数を投げることが目標になってしまうと、集中力が続かなくなり、ケガにもつながります。

 日本ハムのコーチ時代にも、フォームが崩れているのに「まだ投げたい」と言う投手がいました。その時は、「こうなっているけど、それでもいいの?」と、無理に止めさせることはなかったのですが、今の状態を教えてあげることはしていました。吉川(光夫)だけはボールを取り上げて、投げさせないようにしていましたが......(笑)。彼はきっちりと仕上がっているのに、不安があるのか、とにかく球数を投げようとする。気持ちはわかるのですが、投げ過ぎて良くなることはありません。

 その点、斎藤は自分自身の状態を判断できる力もありますし、自分で考えて練習できる選手です。そこは心配していないのですが、故障明けのシーズンということもあり、多少なりとも不安はあるでしょう。

 昨シーズン、斎藤は「腕が振れない」と感じていた時期もあったようですが、プロにはそういうピッチャーがたくさんいます。調子が悪くなった時、「どういう腕の振りをしていたのかな?」と、つい考えがちになってしまう。でも、意識すればするほど、悪い方向にいってしまいます。実は、大事なのは、腕を振るまでの動作なんです。腕が振れないピッチャーというのは、腕を振るまでの段階でどこかにひずみがあり、うまく投げられない場合がほとんどです。その原因として考えられるのが、軸足への体重の乗せ方と、右投手なら左側の体の使い方です。しっかりと軸足に体重を乗せて、肩の開きを抑えることができれば、体重移動もスムーズにできますし、しっかりと腕も振れるようになります。斎藤も、そこを意識してほしいですね。

 最後に、今季の斎藤は中継ぎで起用するという話もありますが、体のことを考えたら、先発の方がいいのではないかと僕は思います。リリーフはどうしても体に負担がかかるので、故障明けの斎藤には、正直厳しいと思います。例えば、僅差で勝っているゲームの1イニング限定なら何とかやっていけると思いますが、日本はまだそうした起用法は確立されていません。それにリリーフは、試合に投げるだけでなく、ブルペンでも肩を作らなくてはいけません。1年を通して考えると、相当な球数になってしまいます。とにかく、オープン戦で結果を出し、先発ローテーションの枠を手にしてほしいですね。

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