虎の守護神候補・呉昇桓は藤川球児を超えられるか? (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

  また呉は、どんなピンチでもまったく表情を変えないことから、韓国では「石仏」という異名をとった強心臓の持ち主だ。和田豊監督をはじめとした首脳陣も、公言こそ控えているものの、「もう抑えは十分に計算できる」と目論んでいる。

 昨シーズンの阪神は、久保康友に始まり、福原忍らのベテランが抑えに回ったが最後まで定着することができず、シーズン終盤の失速につながった。しかし、今季は間違いなくその役割を呉が担うだろう。

 これまで韓国から日本球界にやって来た投手の中で、抑えは宣銅烈(ソン・ドンヨル)、林昌勇(イム・チャンヨン)がいたが、彼らは全盛期を過ぎての来日だった。しかし呉はまだ31歳と、体力的にもピークと呼べる時期に来た。韓国球界の中には、「呉昇桓は間違いなく宣銅烈や林昌勇よりもいい成績を残すはず」と言い切る者もいる。

 それと何より肝心なことは、どこまでの信頼感、存在感を示せるかだ。かつての藤川は、ブルペンにいるだけで味方は安心し、相手にはプレッシャーをかけることができた。これこそが絶対的守護神と呼ばれた所以(ゆえん)だ。呉は来日以来、まだ実戦での登板はなく、ピッチングはベールに包まれている。それだけに未知数の部分はあると思うのだが、日韓を知る野球関係者の中では、「心技体で藤川の穴を埋めるのに十分な力を持っている。それどころか、藤川を超えるほどの活躍をする可能性だってある」という見方がすでにできつつある。

 では具体的に、呉が阪神の抑えとして活躍するためのポイントはどこにあるのか? 結論から言えば、呉の能力以前に首脳陣の使い方にあるのではないかと考えている。特に日本の場合は、「より投げやすい場面で使うこと」に気を配り、9回限定にこだわる監督が多い。おそらく和田監督も、久々の"虎の守護神"を手札に持ち、「投げる試合はすべて抑えて欲しい」という気持ちから9回限定と考えているはずだ。シーズンを通しての体調維持など、そこに疑問を挟む声は少ないかもしれない。だが呉の場合、その起用がアダとなる可能性がある。

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