【プロ野球】栗山監督が行なった荒療治で斎藤佑樹は覚醒するか? (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

  栗山監督のいう厳しさとは、越えるべきハードルを高く設定するということである。斎藤に開幕投手を託し、当たり前のようにエースとしての仕事を求める。絶対的な存在のダルビッシュ有が抜けたとはいえ、チームに3年連続2ケタ勝利をマークした武田勝がいるのに、昨シーズン、6勝6敗の斎藤を柱に据える。栗山監督にも、もちろん斎藤にも、痛くない腹を探られる居心地の悪さが生まれてしまう。斎藤がこう言っていた。

「余計なことをいろいろと思っちゃったりしました。でも、ふっ切れたのは、監督に開幕だと告げられたときです。オープン戦で神宮球場に来たとき、ロッカールームの監督室に呼ばれて、手紙をもらったんです。そこに『今年一年、任せたぞ』って感じのことが書かれていて、あのときからもう、やるしかないんだと思って......」

 手紙を渡された斎藤は、栗山監督から「ちょっと開けてみて」と言われて、目の前で封を開け、手紙を読んだ。そこには2行ほどの短い言葉が記されていた。

 2012年 斎藤で開幕

 頼んだぞ! 共にチームのために

 栗山英樹

  そんな栗山監督の課したハードルを、開幕からの斎藤は越えてきた。開幕戦で完投勝利をマーク、プロ初完封も成し遂げた。カードの頭を任され、1カ月あまりで4勝を挙げてローテーションの軸として機能してきた。言ってみれば今シーズンの斎藤は、栗山監督の入れたムチによって、眠っていたポテンシャルを引き出されたと言っていい。

 ところが、である。

  大切な"第二の聖地"で、もがいていたとはいえ、かろうじて踏みこたえていた斎藤にとって、いかにDHのないセの主催ゲームとはいえ、これほど早い降板は耐え難い屈辱のはずだ。斎藤が4回のマウンドに立てる可能性は、ひとつしかない。それは、鶴岡がダブルプレイに倒れて、チャンスで自分の打順に回ってこないこと。斎藤がそう思っていたかどうかは知る由もないが、瞬時にそんなことを思い巡らせていたら、鶴岡が初球を打って出て、本当にショートゴロのダブルプレイに倒れてしまった。9番の斎藤に打順が回ることなくチェンジとなり、斎藤は4回のマウンドに上がった。

  そして斎藤は4回を3人で抑える。8番の田中浩康をサードゴロ、9番のオーランド・ロマンをセンターへの浅いフライ、1番のラスティング・ミレッジをサードへのファウルフライに打ち取った。どれも芯を外す斎藤らしいピッチングだった。苦しみながらも粘ったおかげで序盤の3回を3点までに抑え、4回をゼロに抑えれば、斎藤としては、さあ、これからというところだったはずだ。

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