【特別対談】千賀滉大が『キングダム』原泰久に明かした「メジャー1年目で12勝を挙げられた理由」 (4ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 市川光治(光スタジオ)●編集協力

 わかる気がします。僕もスタッフに「売れたらいいなと思う人は売れないよ」という話をします。要は、偶然売れることはないと思っているからです。自分は売れるんだ、と。じゃあ売れるために何をすべきか。それをひたすら考える。ほかのことを考える暇がないくらい、繰り返すだけ。そうすると自分に足りないものがわかってきます。

千賀 野球に通じるものもあるかもしれません。そもそも「自信って何だろう」と思う時があります。余計なことばっかり考えるから、迷いが生じて自信があるとか自信がないみたいな話になる。目標さえあれば、どうにでもなると思うんです。

 僕は最初、すぐに100万部売ると決めていたというか、売れるだろうと思って漫画業界に入ったんです。もともとサラリーマンで、業界のことを知らなかったこともありますけど。だけど、最初に単行本を出した時は2万5000部でした。「え、桁が間違ってるんじゃ?」って思いました(苦笑)。理想と現実の差が、あり得ないくらい大きかったことを突き付けられたのです。その時に考えたのが背伸びをすることでした。少しずつ段階を踏んでと考える人もいますが、私はあくまで目標値を変えることなく、自分に何が足りないかを考えました。届かなければまた背伸びをした。それを繰り返していると、いつかその高さに自分がたどり着くものなんです。

千賀 背伸びをするなという意見もありますが、それは僕も違うと思います。最初にうまくいかないと「ダメだ」とネガティブな発言をする人も多いですが、足りないことをすぐに考えることってすごく大事。目標を高く決めているからこそ、そこに行くためにどうすべきかと常日頃から考えるんです。原先生のお話を伺って、やっぱりそうだなとあらためて思いました。

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千賀滉大(せんが・こうだい)/1993年1月30日生まれ。愛知県出身。蒲郡高から2010年育成ドラフト4位でソフトバンクに入団。12年に支配下登録され、13年にリリーフとして頭角を現す。16年は先発として12勝をマーク。19年にはノーヒット・ノーランを達成し、20年にはエースとして投手三冠を達成。22年オフに海外FA権を行使し、ニューヨーク・メッツに移籍。1年目から29試合に登板し、12勝(9敗)を挙げる活躍を見せた。

原泰久(はら・やすひさ)/1975年6月9日生まれ。佐賀県出身。大学院卒業後、システムエンジニアとして就職するも、漫画家になる夢をあきらめきれず勤務先を退社。2003年に『週刊ヤングジャンプ』(集英社)主催のMANGAグランプリにて奨励賞を受賞。06年『キングダム』連載開始。13年に第17回手塚治虫文化賞にてマンガ大賞を受賞。23年、『キングダム』の累計発行部数が1億部を突破。好きなプロ野球チームは福岡ソフトバンクホークス。

撮影協力●ヒルトン福岡シーホーク

プロフィール

  • 田尻耕太郎

    田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)

    1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。

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