大谷翔平がホームランを打ちやすい球種は? 大好物はシンカー、苦手な変化球は... (3ページ目)

  • 宇根夏樹●取材・文 text by Une Natsuki

【投げ損なったスプリッターを高確率でホームラン】

 ホームランのペース(打数/本)と打率のどちらにおいても、大谷が優れた数値を記録しているのは、右投手のシンカーだ。7.5打数/本と打率.388。ホームラン1本当たりの打数が10に満たず、打率も.300以上はこの球種しかない。

 右投手のシンカーとは対照的に、左投手のチェンジアップは29.0打数/本と打率.172。ホームラン1本当たりの打数が25を超え、打率も.200未満はこの球種だけだ。

 なかには、一方の数値が高く、もう一方が低い球種もある。右投手のスプリッターは、ホームランが4.5打数/本だが、打率は.195。映像を見るとモンタスから打ったものを含め、この球種のホームランは4本とも落差が小さい、あるいは落ちていない。大谷は投手が投げ損なったスプリッターをホームランにしている。

 反対に、左投手のナックル・カーブは打率こそ.417と高いものの、5安打のなかにホームランは皆無だ。二塁打と三塁打もなく、すべて単打。しかも、そのうちの2本は内野安打だった。

 もちろん、球種だけでなく、コースやそこに至るまでの配球とカウントなどにより、結果は変わってくる。また同じ球種でも、各投手の球速や曲がり方などは異なる。ただ、こうして見てくると、球種ごとの結果にはかなりの違いがある。

 なお、今シーズンはマウンドに上がらないが、2018年と2020年〜2023年に大谷が投げた各球種の結果は、以下のとおりだ。

対右打者の被打率は、低い順に、スプリッター=被打率.084(131打数11安打)、スウィーパー=被打率.144(396打数57安打)、カーブ=被打率.154(26打数4安打)、シンカー=被打率.226(31打数7安打)、フォーシーム=被打率.276(232打数64安打)、カッター=被打率.280(75打数21安打)。

 対左打者は、スプリッター=被打率.116(199打数23安打)、スライダー=被打率.118(17打数2安打)、スウィーパー=被打率.208(173打数36安打)、カーブ=被打率.208(48打数10安打)、フォーシーム=被打率.267(311打数83安打)、カッター=被打率.300(90打数27安打)だ。

 20打数未満に1本のペースでホームランを打たれているのは、対左打者のカッターと対左打者のスウィーパーだけ。数値は、15.0打数/本(6本)と17.3打数/本(10本)だ。対右打者のスプリッター、対右打者のシンカー、対左打者のスライダーは、ホームランを打たれていない。

 大谷翔平がバッターボックスに立つと、その一挙手一投足に注目が集まる。警戒を強める相手ピッチャーが投げてくるさまざまな球種を、大谷は今シーズン、何本スタンドに放り込むだろうか。

プロフィール

  • 宇根夏樹

    宇根夏樹 (うね・なつき)

    ベースボール・ライター。1968年8月14日生まれ。三重県出身。MLB専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランス。著書『MLB人類学──名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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