大谷翔平、山本由伸...日本人投手がメジャーで巨額契約を結べる理由 小林至が解説する「MLBとNPBの年俸格差」 (4ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── ちなみに日本人打者はどうなのでしょうか?

小林 2001年にイチローがメジャーで首位打者、盗塁王に輝き、新人王、MVPも獲得しました。そして2003年には松井秀喜がヤンキースに移籍し、本塁打は減りましたが、勝負強い打者として活躍しました(2009年のワールドシリーズでMVP)。

 このふたりの活躍もあって、2004年に松井稼頭央がメッツ(3年=約23億円)と、2008年には福留孝介(4年=約53億円)がカブスと大型契約を結びました。ただ、結果はそこまで芳しくありませんでした。このあたりから日本人野手の評価が厳しくなってきました。

── 結局、野手で10年以上活躍したのは、イチローさんと松井さんだけです。

小林 投手に比べて、野手で活躍した選手は数えるほどしかいません。ほとんど活躍できずに日本に帰ってきた選手もひとりやふたりではありません。これまで日本人でメジャーに挑戦した投手は40人を超えますが、野手は20人ほどです。MLBスカウトは、日本プロ野球のレベルは3Aより上でもメジャーよりは低い「4A」などという表現をよくするのですが、サンプルが少ない。メジャーは"数字的根拠"を重要視する世界ですので、少ないサンプルをもとに価値は乱高下するのです。

── そう考えると、昨年オリックスからレッドソックスに移籍した吉田正尚選手はすこい契約(5年=約126億円)だということですね。

小林 正直、驚きました。日本人野手に対して、そんなに高評価するとは思っていませんでしたので。そして、それなりの成績を残しました(140試合/155安打/打率.289/15本塁打/72打点)。今後、吉田の活躍度合いが、メジャーを目指す日本人野手の評価にもつながっていくでしょうね。


小林至(こばやし・いたる)/ 1968年生まれ、神奈川県出身。1991年、千葉ロッテマリーンズにドラフト8位指名で入団。94年から7年間米国在住、コロンビア大学でMBA取得。2002〜20年、江戸川大学(助教授/教授)、2005〜14年、福岡ソフトバンクホークス取締役を兼任。パ・リーグの共同事業会社「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げや、球界初「三軍制」の導入等に尽力した。立命館大学、サイバー大学で客員教授。経産省『地域×スポーツクラブ産業研究会』委員、スポーツ庁『スタジアム・アリーナ推進官民連携協議会』幹事、スポーツ庁『スポーツ産業拡大に向けた潜在分野検討会』委員、ジャングルX株式会社顧問。近著『野球の経済学』(新星出版)など著書、論文多数。博士(スポーツ科学)、学校法人桜美林学園常務理事/桜美林大学教授/大学スポーツ協会(UNIVAS)理事 

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