大谷翔平の2023年シーズンはどこがすごいのか 鶴岡慎也は「再現性」に注目する (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Getty Images

── WBC期間中も、トラックマンやラプソードを使ってボールを測定している姿を見ました。

鶴岡 回転軸、回転数、曲がり幅など、自分の感覚と数値が一致しているのかどうかの確認作業に使っていたと思います。

── メジャーは今季からピッチコム(サイン伝達機器)が導入されました。自ら球種のサインを出すなど、投球の組み立てはほぼ投手主導といえます。

鶴岡 ピッチコムに関する大谷選手のコメントを見たことがありますが、「ひとつ作業が増えるのでラクということはない。だが、あらゆるカウントにおいて、自分で考えながら投げるから楽しい。自分で決めて投げる責任もあり、言い訳できない」という趣旨のものでした。あのコメントを見て、やはり野球が大好きで、責任感ある大谷選手らしいなと思いました。

── 鶴岡さんとバッテリーを組んでいる時は、どのように取り決めされていたのですか。

鶴岡 私と組んでいる時は、投球前にミーティングをして、ほぼ打ち合わせどおりに投げてきた記憶があります。当時はストレート、スライダー、フォーク、カーブを投げていましたが、サインに首を振るタイプの投手ではありませんでしたね。

【本塁打の打ち損じがヒットになる】

── "フライボール革命"によると、打球速度が158キロを超えて、打球角度が26〜30度だと、本塁打をはじめ安打が出やすいと言われています。今季30号目は、打球速度185.2キロ、打球角度29度で、今季のメジャー最長の493フィート(約150メートル)の特大アーチでした。

鶴岡 打球速度と打球角度は意識してやっていると思います。実際、彼はメジャーリーガーのなかでも打球が飛ぶ選手だというデータが出ています。大谷選手の場合は、本塁打の打ち損じがヒットになるというイメージです。

── NPBでプレーした5年で、規定投球回到達は2回ありましたが、規定打席到達はなし。MLBの4年では、規定投球回到達が1回、規定打席到達が2回。昨年は初めて投打とも"規定"をクリアし、15勝と34本塁打はいずれもア・リーグ4位でした。

鶴岡 規定投球回と規定打席の到達には、体力と回復能力が必要になります。とくに大谷選手の場合は二刀流ですので、両方いい結果を残さないとどちらかに絞らざるをえなくなってしまうわけです。それだけに規定投球回と規定打席をクリアしたのは、とても意義のあることです。大谷選手がコンディショニングに重きを置いているのは、いい状態でグラウンドに立てれば、ある程度結果を残せるという考えがあるからでしょう。

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