今の田中将大は真っ直ぐがエグい。プレーオフ進出へトップギア (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Image

 これらの結果は、配球や打者との力関係も影響してくるため、すべてを速球の精度アップに結びつけるのは早計かもしれない。上記のジョーンズとの真っ向勝負に関しては、田中本人も「裏をかきにいっただけ」と振り返っていた。

 ただ、今の田中が「真っ直ぐで空振りを奪えている」ことは紛れもない事実だ。速球の質が向上した時期と、調子が上がってきた期間が被っていることは単なる偶然ではないだろう。

 上昇気流に乗る田中に対し、チームは苦しんでいる。5日のレッドソックス戦でも9回裏に3点差を追いつかれ、延長10回にサヨナラ負け。ア・リーグ東地区2位のヤンキースは、首位を走るライバルとの直接対決で痛恨の4連敗を喫し、ゲーム差は一時、今シーズン最大の9.5まで開いた。

 ワイルドカード争いではトップに立っているが、2番手のアスレチックス、3番手のマリナーズとの差も急激に詰まっている。地区優勝を逃すだけでなく、"悪夢のプレーオフ逸"もありえない話ではなくなってきている。

 そんな悲劇のシナリオを避けるべく、今後の田中には"投手陣の柱"らしい活躍が求められる。強豪チームをきりきり舞いさせた昨年のポストシーズンのような投球を、今年はより早い時期から披露しなければならない。

 チームの明暗を分ける右腕の調子を測るバロメーターは、スプリットの切れ味だけではない。ベテランスカウトの指摘どおり、今後は真っ直ぐの球威にも要注目だ。

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