MLBスカウトが分析。田中将大はメッタ打ちスランプから脱出したか (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

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──これまで安定感に定評があった田中ですが、5月中旬の2登板では驚くほどに痛打されました。不調の要因をどう考えますか?

「私が話したヤンキースの人間は、田中の投球フォームが崩れていることを心配していた。具体的には、投げ急ぐあまりに身体が開き、投球の際に腕の位置が下がってしまっていた。そのフォームでは球のキレがなくなり、コマンド(狙った場所、コースに投げる能力)を安定させることも難しい。メカニクス(投球の際の技術や体の動き)の乱れのおかげで、どの球もホームプレート中央の甘いコースに入りがちになっていた」

──26日のアスレチックス戦の前に本人は、「制球、キレのどちらかがよければここまで崩れることはないが、両方の不調が重なったために歯止めが効かなくなった」と話していましたが、その26日の試合では見違えるような投球をしました。最新の登板をどう分析されましたか?

「アスレチックス戦ではメカニクスが改善され、より辛抱強い、安定したフォームになっていった。おかげで速球系の球速も十分。(資料を見ながら)速球は92〜95マイルの間で、93マイル(約150キロ)の球が多かった。その球を低めに丹念に集め、ストライクゾーンの両サイドに上手に投げ分けることもできていた」

──変化球の中でよかったボールは?

「特にスライダーのキレがよくて、曲がり始めるのが遅かったために打者は見極めが難しく、これが『アウトピッチ(決め球)』になっていた。右打者に対しては外角低めにきれいに曲がって落ち、左打者に対しては、外から曲げて外角のストライクゾーンに決めるいわゆる『バックドア』も有効だった」

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