ジャイアンツ世界一の陰にWBC日本代表の影響あり?

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 2014年シーズンのメジャーリーグは、サンフランシスコ・ジャイアンツがワールドシリーズでカンザスシティ・ロイヤルズを破って幕を下ろしました。最終戦までもつれ込むほど両者の実力差は紙一重で、どちらが勝ってもおかしくないワールドシリーズだったと思います。ジャイアンツは2010年、2012年に続き、過去5年間で3度目となる世界一です。

喜び合うマディソン・バムガーナー(左)とバスター・ポージー(右)喜び合うマディソン・バムガーナー(左)とバスター・ポージー(右) 今回のワールドシリーズを見ていて、改めて実感したのは、「絶対的エースの存在」の大きさでした。絶対的エースとは、ジャイアンツ6年目の左腕、25歳のマディソン・バムガーナーです。「絶対的エースがいればチームは勝てる」ということを、彼はワールドシリーズの大舞台で証明したと思います。

 ワールドシリーズでのバムガーナーは、計21イニングを投げてヒット9本、失点はわずか1点という内容でした。成績は2勝0敗1セーブ、防御率0.43。まさに、「真のエース」と呼ぶに相応しい記録と言えるでしょう。また、彼のすごさは通算防御率からも読み取れます。レギュラーシーズンの通算防御率が3.06に対し、ポストシーズン通算では2.14、さらに過去3度出場したワールドシリーズでの通算は0.25。バムガーナーという男は大舞台になればなるほど、エースとしての真価を発揮しているのです。これほど頼りになる先発ピッチャーは他にいないでしょう。

 2010年にジャイアンツが56年ぶりの世界一となったとき、バムガーナーは先発ローテーションに定着したばかりのルーキーでした。しかし、テキサス・レンジャーズとのワールドシリーズでは第4戦に先発し、8回無失点の好投でシリーズ初勝利を挙げています。さらに、2012年のワールドシリーズでは第2戦に先発し、デトロイト・タイガース打線を6回無失点で抑え、またも勝ち投手となりました。そして今回も第1戦、第5戦ともに勝利投手となっているので、バムガーナーはワールドシリーズで一度も負けたことがありません。

 まだ25歳という若さですが、マウンド度胸は十分。150キロ台の速球を中心に、カーブやスライダーなどを自在に投げ分けます。また、スリークォーターから繰り出されるボールは出どころが見づらいので、相手バッターはつい振り遅れ気味になってしまうのです。この若さでチャンピオンリングを3つも手にした選手は、近年では1996年から2000年にかけて4度の世界一に輝いたヤンキースの若手主力メンバー(デレク・ジーター、ホルヘ・ポサダ、アンディ・ペティットなど)くらいではないでしょうか。

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