MLBプレイバック2013。メジャー史に残る「3つの悲劇」 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

第7位 日本人先発3投手がシーズン200イニング突破

 テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有投手、ニューヨーク・ヤンキースの黒田博樹投手、そしてシアトル・マリナーズの岩隈久志投手、この3人が一流先発投手の証(あかし)である「シーズン200イニング」を突破しました。この出来事は、もっと大きく取り上げるべき事柄だと思います。32試合に登板したダルビッシュ投手は209イニング3分の2、同じく32試合に先発した黒田投手は201イニング3分の1、そして33試合の岩隈投手はリーグ3位の219イニング3分の2。どれも賞賛すべき数字です。

 その結果、ダルビッシュ投手は13勝9敗・防御率2.83を記録。さらに277奪三振で、初のタイトルを獲得しました。エースと呼ぶに相応しい活躍です。一方、黒田投手は11勝13敗・防御率3.31と負け越していますが、常に勝利を求められる名門ヤンキースで、これだけの成績を残したのは素晴らしいことだと思います。また、3年連続して200イニングを突破するなど、大エースのCC・サバシアの成績(14勝13敗・防御率4.78)と比べても、決して引けを取っていません。

 そして3人の中で最も衝撃的だったのが、岩隈投手の活躍ぶりでしょう。打線の援護が少ないマリナーズにおいて、14勝6敗・リーグ3位の防御率2.66をマーク。チームに君臨する「キング」ことフェリックス・ヘルナンデスを上回る成績を残したのです(ヘルナンデスは12勝10敗・防御率3.04)。シーズンを通して抜群の安定感を見せ、個人的には日本人MVPを挙げたいぐらいの衝撃でした。

 また、ダルビッシュ投手と岩隈投手は、今シーズンのサイ・ヤング賞候補にも名を連ねています。もし、受賞することになれば、もちろん日本人初の快挙。3名のサイ・ヤング賞候補のうち、2名が日本人というのは本当に驚きです。日本人ピッチャーの実力を改めて示した1年だったと思います。

第6位 9回ツーアウトからまさかの大どんでん返し

 昨シーズンは、ノーヒットノーランが数多く生まれました。合計7回のノーヒッターはメジャータイ記録。そのうち3回は完全試合でした。しかし今シーズン、ノーヒットノーランは3回だけだったものの、逆に、あとひとりでノーヒッターを逃したケースが3回もあったのです。

 まず1回目は、4月2日、ヒューストン・アストロズ戦に登板したレンジャーズのダルビッシュ投手です。開幕2戦目に先発したダルビッシュ投手は、アストロズ打線を完全にシャットアウト。9回ツーアウトまでフォアボールすら与えぬピッチングで、完全試合まであとひとりと迫りました。しかし、最後の打者に投じた111球目をセンターにはじき返されて万事休す。9回ツーアウトから完全試合を逃した史上11人目の投手になってしまいました。

 2回目は9月6日、ダイヤモンドバックス戦に先発したサンフランシスコ・ジャイアンツのユスメイロ・ペティットです。ベネズエラ出身のペティットは、それまで一度も完投すら経験のないピッチャーでした。しかしこの日は絶好調で、9回ツーアウトまでひとりもランナーを出さない快投を見せたのです。ところが、27人目の打者、エリック・チャベスにライト前ヒットを打たれて、残念ながら完全試合を逃してしまいました。

 そして最後は、セントルイス・カージナルスの新人、マイケル・ワカです。9月24日のワシントン・ナショナルズ戦に先発したワカも、9回ツーアウトから内野安打を許してノーヒットノーランを目前でフイにしました。その後、ワカはポストシーズンで大活躍して、リーグチャンピオンシップシリーズMVPに輝きましたが、あのときの悔しさが、22歳の新人に火をつけたかもしれません。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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