2072分の42。イチロー流、ケガをしないための「極意」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Getty Images

 こんなこともあった。

 あれは、2007年の夏の出来事だ。

 マリナーズでプレイしていたイチローは、オークランドであるハプニングに出くわした。

 ノーアウト満塁で、イチローはセカンドランナーだった。続くバッターの打球が左中間を割る。三塁ランナーに続いて、二塁からイチローもホームイン、さらに3人目のランナーもホームへ突っ込んだ。

 しかし、その送球をキャッチャーが捕り損ねる。

 ボールは一塁側のマリナーズのダッグアウト前へと転がっていった。

 そこには、ホームインしたばかりのイチローが歩いていた。

 背後から足元に転がってきたボールに、イチローは気づかなかった。そのイチローの背中を、カバーリングに走ってきた相手のピッチャーが突き飛ばしたのである。そのとき、イチローの体は一瞬、宙に浮いたように見えた。イチローにしてみれば、死角から飛び込んできた相手に、よもや突き飛ばされるとは思いもよらなかったはずだ。首を痛めてもおかしくなかったし、よろめいて足をくじいても不思議ではなかった。しかし、試合後のイチローは平然とこう言った。

「あの時も僕は力を抜いていますから、突き飛ばされてもフワッて感じでした。ドーンって感じはしないですよ。いつも力を抜いていますから、それがいいんですよね。何かあった時のために、常に力を抜いていようと思ってるんです。もちろんあんなケースは予測できないけど、普段からそういうクセをつけておかないと、それをしたいときにできるわけではありませんからね」

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