【MLB】サイ・ヤング賞最有力のストラスバーグが、8月でシーズン終了!? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 ここで少し、ウォルター・ジョンソンについて紹介したいと思います。セネターズ一筋に21年間プレイしたジョンソンは、サイ・ヤングに次ぐ歴代2位の通算417勝を記録し、通算3508奪三振を残した伝説の大投手です。当時、あまりにもボールが速かったので、ツーストライクと追い込まれたバッターが「どうせボールが見えないから」と言って、ベンチに引き揚げたという逸話もあるほどです。そんな偉大なピッチャーを思い出させるほど、今年のストラスバーグの活躍ぶりは突出しています。現在の成績は、13試合の登板で8勝1敗・防御率2.45。さらに77イニングで100奪三振を記録し、与えたフォアボールはわずかに20個です。平均的な奪三振とフォアボールの比率は『2:1』ですから、ストラスバーグの『5:1』の比率は驚異的。アメリカでは「この調子でいけばサイ・ヤング賞」という声も上がっています。

 ただ、今シーズンのストラスバーグの投球回数は、160イニングぐらいに制限されそうなんです。エースと言われる投手は、1シーズンで33~34試合に先発し、200イニング以上投げます。しかし、ストラスバーグは故障上がりなので、無理をさせず投球回数を抑えようと球団は考えています。おそらく先発機会としては、27試合ぐらいではないでしょうか。となると、ストラスバーグの今シーズンは8月いっぱいで終わってしまいます。現在、ナショナルズはナ・リーグ東地区の首位を走っているのですが、「ストラスバーグも例外ではない」と、マイク・リッゾGMは160イニング以上投げさせない意向です。

 我々日本人からすれば、少し理解しづらいことだと思います。しかしアメリカでは、正しい判断とされているのです。ストラスバーグはナショナルズだけでなく、球界の宝。まだ23歳、今後何年もメジャーで活躍してもらうためと、ファンも理解しているようです。前述したウッドやプライアーにしても、若いころに酷使されたことで故障を負い、ウッドは34歳で引退し、プライアーも復帰に苦しんでいます。同じような過ちは避けなければなりません。ベースボールを良く知るアメリカの器の大きさとでも言いましょうか、実にメジャーらしい決断だと思います。

 現状では、ナショナルズがプレイオフに進出しても登板させない方針なので、ストラスバーグの今年の最大の見せ場は、やはり7月10日(現地時間)のオールスターでしょう。『ウォルター・ジョンソンの再来』と呼ばれるストラスバーグが、ア・リーグの強力打線をどうやって封じ込むのか。首都ワシントンだけでなく、全米中が注目するはず。今シーズン、どこまで記録を伸ばすことができるのか、ストラスバーグの投球は今後も必見です。

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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