佐々木麟太郎のスタンフォード大進学は「あっぱれ」 OBのマーティ・キーナートが同校の学業やスポーツ文化などを解説 (2ページ目)

  • 永塚和志●取材・文 text by Nagatsuka Kaz

【歴史で培われた文武両道の土壌】

―― マーティさんの中で、スタンフォードからメジャーリーグへ行った選手で、誰が印象深いですか?

「まずは、僕と同時期にスタンフォードでプレーしていたボブ・ブーンですね。彼はメジャーリーグ(1972〜1990年)で数々の記録を作った選手で、僕は彼が歴代のキャッチャーとしてもトップ5に入ると思っていますが、彼のお父さん(レイ・ブーン)も、2人の息子(主にシアトル・マリナーズで活躍したブレットと現ニューヨーク・ヤンキース監督のアーロン)もメジャーリーグのオールスター選手で、三世代でオールスターですよ。

 あとはハービー・シャンク(メジャーで1試合のみ登板)は、NBAフェニックス・サンズのセールス・マーケティング部門の上級副社長を務めました」

―― すごい経歴の人物が多いんですね。

「僕は『文武両道、日本になし』(早川書房)という本を書きましたが、スタンフォードは世界一の、本物の文武両道の学校です。日本は(アメリカのような文武両道の学校は)ゼロですよ。

 スタンフォードからメジャーリーガーになったのは過去102人いるようです。これがハーバードだと19人。ほかにもっと多くの選手を輩出している学業レベルの高い学校があるかもしれないですが、スタンフォードは本当に文武両道なんです。

 スタンフォードは野球で全米王座に2度(1987、1988年)なっていますし、ノーベル賞を獲った先生(同校の教授だけで延べ30名以上の受賞者がおり、それ以外の同校に縁のある人物も含めると延べ数十名にものぼる)もたくさんいます。麟太郎くんは最高の大学に入ったのです」

―― スタンフォードは学業の優秀さでも有名な大学ですが、スポーツでもさまざまな競技で世界的な活躍をする選手を多数生み出してきました。学業面だけ優れている学校は多いですが、なぜスタンフォードは学業とスポーツの両方ですごいのでしょうか?

「昔からそういう特別な文化が作られてきたのですが、学生のなかでもスポーツをやっているパーセンテージは非常に高い。勉強ができてスポーツにも優れた人(高校生)はスタンフォードに行きたいとなるのです。結果的に入学できる、できないに関係なく、勉強もスポーツもできる人のファーストチョイスにスタンフォードがなる確率はほぼ100%だと言ってもいいくらいです」

―― そういう文武両道の学校へ進むことで、佐々木選手は学業でも頑張らないといけないですね。

「だから、彼には勉強してほしいですし、しなければならない、ということになります。そういうシステムなんです。NCAA(全米大学体育協会)では1週間で20時間以上は練習できないというルールがあります。家庭教師もいますから(勉強はしなければならない)。

 現在、NBAロサンゼルス・レイカーズでプレーする八村塁選手の場合も日本の高校から米国のゴンザガ大に進学しましたが、昼食の時でも隣に家庭教師が座り、授業が終わってから練習までにも家庭教師がいる、飛行機に乗ったら隣に家庭教師が座る、遠征先でも隣の部屋には家庭教師がいたわけです。つまりは(大学は)塁選手に投資をしたわけです。おそらく麟太郎くんも勉強についていけるように学校が同じような扱いをするでしょう」

――野球のシーズンも2月から始まり、カレッジ・ワールドシリーズ(全米王座決定トーナメント)が6月下旬までなので、日本の感覚からすると短いですね。

「日本の場合は同じスポーツを年中やりますが、アメリカの大学スポーツはシーズン制。だからシーズンはわりと短いです。ですがこれは、3カ月はアメリカンフットボールのシーズン、3カ月はバスケットボールのシーズン、3カ月は野球というもともとの仕組みなんです。僕も小学校1年生から大学に入るまでの12年間、アメリカンフットボールとバスケットボール、野球の3つのスポーツをやっていました」

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