「山内政治さんの野球は強烈で忘れられない」 壮絶な人生を送った名将のラストゲーム...宮崎裕也監督(彦根総合)が回顧 (3ページ目)

  • 藤井利香●取材・文 text by Fujii Rika

【知れば知るほど一途に前向き】

 山内さんを目の前にした印象は、凛とした人だなと。のちに彼の身に起きた事実を知れば知るほど、すごい人だなと感じています。

 すべてを抱え込まずもっと人を頼ればいいいいのに、一途に前を向き、しかも苦しいほうの選択を当たり前にした人。たとえ私が手を差し伸べるようなことを口にしても、きっと「僕の問題ですから」とあっさり断られていたでしょう。

 山内さんの奥さんは最後に自死を選んでしまいます。山内さんが(自殺ほう助容疑で)逮捕されたあと、担当検事が「なんであと追いしなかったんだ」という非情な言葉をかけたようですが、確かに私も周りで同じような言葉を耳にしました。でも、それは私なりに理解できると思っています。

 彼はとことんやったから、奥さんと一緒には逝かなかった。中途半端だったらもうラクになりたいと考えたかもしれない。でも、やり尽くしたからもうそれ以上はなかった。彼が逮捕された時、これほど追い詰められていたことを親しいはずの人ですら気づいていませんでした。

 本当にひとりで戦って、愚痴や言い訳すら口にしなかったそうです。私はそれが信じられず、いったいどんな気持ちでいたのだろうと、今でも折に触れて考えることがあります。

早稲田大学時代の山内政治氏/『幻のバイブル』(日刊スポーツ出版社)より早稲田大学時代の山内政治氏/『幻のバイブル』(日刊スポーツ出版社)より

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