「独立のギータ」徳島インディゴソックス・井上絢登を待ち受けるのはプロか、野球引退か (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

【2年連続本塁打王・打点王の二冠】

 数々の反省を糧に、井上は飛躍の2023年シーズンを送っている。

「今年は『コンパクトにフルスイングする』ことを自分の形にしています。2ストライクからの対応を変えたことで、打率も3割を超えましたから」

 井上が今シーズン残した成績は、67試合で打率.312、14本塁打、39打点、14盗塁。打率は2厘差で首位打者を逃したものの、今季も本塁打王と打点王の二冠を獲得している。井上にあえて1番打者を任せている岡本監督は「出塁率重視で、いい存在感を出している」と及第点を与えた。

 富山サンダーバーズ戦でも、ストライクからボールへと逃げる変化球に井上のバットが止まるシーンが見られた。

 そして、守備位置も外野だけでなく三塁もこなしている。上からも横からも投げられるスローイングを見る限り、即席サードの雰囲気はない。

「サードの経験は中学時代にちょろっとだけ。練習は人一倍やっています。練習量は誰にも負けない自信があります」

 練習をした者が必ずしも報われる世界ではない。それでも、井上は身近で猛烈な練習の末にプロ入りの夢を叶えた人間を見てきている。

 福岡大の同期生だった仲田慶介(ソフトバンク育成)である。

 仲田は福岡大大濠高時代に遠投80メートル、50メートル走6秒6という平凡な選手だった。その後、人並み外れた努力で遠投120メートル、50メートル走6秒1の身体能力を獲得。さらに朝から晩までバットを振り、スイッチヒッターをマスターした。2021年のドラフト会議で育成ドラフト会議の最下位となる14位でソフトバンクに指名され、現在はチーム事情に応じて二塁をこなすなど首脳陣からの評価も高い。

 井上は言う。

「仲田が練習していたのは、ずっと見てきました。でも、自分も『あいつには負けない』と思いながらやってきましたから」

【今年はやれることをやった】

 徳島インディゴソックスでは茶野、日隈と同い年の選手が1年でNPBに進んだ。茶野は早々に支配下登録され、一時は新人王を狙えるほどの活躍を見せた。

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