慶應高校&慶應大が力を発揮するために取り組むミーティングと土台にある野村克也の言葉 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

「自信と信念を持って、とりあえずやってみる。気がついたらすぐにやってみる。行動に移す」

「自由とは、組織のために自分に何ができるかという利他的な姿勢をもって、自らが意思決定した責任を持つことで生まれる」

「当たり前のレベルが高まって、それを伝統と言う」

 以上は、まさに堀井監督が伝えたいことだった。

「最初は嫌々やっている学生もたくさんいたと思うけれど、お互いの発表について感想を書いていくのですが、『誰々がこんなに熱いヤツだとは思わなかった』などと発見があるんです。そうやってお互いを認め合っていく。

 広く言えば、メンタルトレーニングの一環でもあります。自分の考え方を整理し、コミュニケーション能力、発信力、理解力が磨かれていく。みんなの前で発表するためには、頭も心も整理されていないといけないですから」

【慶應高校107年ぶり日本一にも一役】

 読書感想文を語り合ったあとには、2日後に始まるリーグ戦で各自がチームのために果たすべき役割を発表した。グループ内でフリートークを交わす際にはルールが2つあると、堀井監督が説明する。

「必ずいいところだけを話します。絶対に人の悪いところは見ない、言わない。あとは、自分の気持ちに素直になる。この2つがルールです」

 チームが勝利を目指す上で自分が果たすべき役割を個々が宣言。その後、副キャプテンや吉岡眞司メンタルコーチ、中根慎一郎助監督、堀井監督が部員たちの前で話をすると、チームはリラックスしつつ、前向きで高揚感の漂う雰囲気に包まれていった。開幕に向けて望ましい精神状態が整い、堀井監督の顔も晴れやかだった。

「いい意味でリラックスしていますが、リーグ戦開幕の2日前の雰囲気ではないですよね(笑)。こうやってチーム全体でオープンに話し合うことで、いつもどおりの姿勢で入っていける。チーム状態が悪い時や、浮かれている時も、みんなで話し合うことでリセットできると思います」

 スポーツでパフォーマンスを高めるためには「心技体」が重要と言われる。そのなかで心を整えるのは不可欠な一方、決して簡単なことではない。プレッシャーがかかればかかるほど、平常心を保つのは難しくなるからだ。

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