高校野球のタイブレークは先攻、後攻、どっちが有利? 経験監督に聞く「勝利のポイント」 (4ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 タイブレークで敗れた経験のあった土浦日大と同様、慶応義塾もセンバツで仙台育英にタイブレークの末に敗れている。森林監督はその経験が生きたと言う。

「春に悔しい思いをしていたので、練習試合でもタイブレークの練習をして"タイブレーク慣れ"をしました。それは功を奏したと思います」

 同じく先攻だったセンバツのタイブレークは2番・大村昊澄から始まり送りバントを選択。大村はしっかり送ったが、その後の一本が出なかった。その試合でサヨナラ打を浴びたのは広陵戦で9回からマウンドに上がった松井喜一。春は犠打、敬遠の後、レフトゴロ、レフト前ヒットと踏ん張れなかったが、この試合は1四球のみの3三振と最高の投球を見せた。

「松井は春にタイブレークで悔しい思いをしてますから。やってきたことを証明するにはいいかなと。『苦しい場面で使うから』と言っていたことが今日に活きたと思います」(森林監督)

 6試合で表裏合計8イニング。16回の攻撃のうち、先頭打者が送りバントを試みたのは12度あるが、半分以上の7度が失敗に終わっている。重圧のかかる場面であることに加え、三塁がフォースプレイとなるため成功させるのは至難の業だ。

 成功した5回を見ても、得点したのは3回だけ。バントを決めても得点確率は60パーセントしかない。それよりも、カギとなっているのが二人目の打者。先頭打者の結果に関係なく、この打者が仕事をすれば得点につながっている。

 スクイズ、犠牲フライで打点を挙げた以外に四球、または安打で出塁すると得点確率は100パーセント。攻撃側は先頭打者がアウトになっても意気消沈しないこと、守備側は先頭打者をアウトにしても油断しないことが勝利への条件といえる。

【タイブレークからの登板は危険】

 このほか、敗れた上田西、明豊には共通点がある。それは、甲子園初登板となる投手がタイブレークからマウンドに上がったこと。その投手の立ち上がりがいきなり延長戦の無死一、二塁から始まるというのは投手にとって酷だ。

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