アマ球界の名将が噛みしめる「教える喜び」率いる新興の大学で無名の選手が急成長 (2ページ目)

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 写真●野球部提供

 完封は投手力だけじゃない。精度の高い守備力に、チームとしての強いパック(結束)がなければできない。それを戦力不十分なはずの二部リーグで成し遂げたのだから、間違いなく快挙だった。

「ちょっと前までは、リーグ戦でスターティングメンバーを書いていると、出身校の欄に野球の名門や強豪校はひとつもない。地方の駅の名前に"高校"をくっつけたような出身校ばかりで、『まるで国立大学みたいやな』ってコーチと話したこともあったなぁ」

 高橋監督自ら、高校の監督時代のツテをたどりながら、関西、中国、四国を中心にコツコツ回って、今では部員数150名ほどの大所帯となっている。

「名門、強豪校でバリバリのレギュラーみたいな選手は、まだなかなか来てくれないですが、逆に中学や高校でやりすぎて、野球することに疲れている、飽きている学生はひとりもいない。高校の時になかなかチャンスに恵まれなかった分、ここでメンバーになって『オレでもこんなにやれるんだ!』って気づいて、いきいきと生活している選手が何人もいる。新興のこういう大学で野球を教える喜びって、そういう彼らと一緒に時間を過ごせることなんじゃないかな......」

【将来性抜群の逸材がズラリ】

 この春のリーグ戦の快進撃の立役者が、投手陣であることは一目瞭然だ。

 エース格の鈴木連(鳴門渦潮)が5試合に登板して4勝0敗(3完封)、防御率0.20。最速146キロのストレートとキレのあるスライダーを武器に、44イニングを投げて48三振を奪い、自責点はわずか1。コントロールとどんな場面でも果敢に向かっていける気持ちと強さ、それにクイックのうまさも加わり打者を翻弄した。

 塩見渉(倉吉北)も奮闘し、5試合41イニングを投げて3勝1敗(2完封)。立派にWエース的な働きを果たしてみせた。

 それだけじゃない。

「ほかにも面白いピッチャー、おるんよ」

 案内してくれた道方康友コーチと一緒にブルペンを見て、驚いた。

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