自己評価が異様に低いドラフト候補、東門寿哉の実力は「プロの俊足選手と遜色ない」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

【プロの俊足選手と遜色ないレベル】

 今年の日本文理大は東門だけでなく、攻守にキレのある動きを見せた二塁手の島袋大地やロングリリーフで好投した新垣瑠依など、沖縄県出身の選手が活躍した。東門は「たまたま沖縄出身のヤツが集まっただけですけど、運命を感じます」と同郷の仲間とのプレーが心地いいという。

 中学卒業と同時に沖縄を出て、故郷が恋しくなる時もあるのではないか。そう尋ねると、東門は相好を崩してこう答えた。

「今も毎日帰りたいと思ってます。1年に1回しか帰れないので」

 気になる進路は、プロ志望届を提出し、支配下でのドラフト指名を目指すという。東門にアピールポイントを聞くと、「足には一応自信があるのと、守備で波のない安定感のあるプレーができるところですかね」と返ってきた。

 心も体も技術も、今の東門がプロ球界で通用するとは思えない。それでも、東門がプロの空気を吸ったら、信じられないような化け方をするかもしれない。そう期待したくなるような可能性を秘めている。

 そのポテンシャルを信じるひとりが、東門に「プロに行ける」と説き続けてきた高武良至信(こうたけ・よしのぶ)助監督である。高武助監督は言う。

「全部完璧でないといけないと気が済まない選手で、先頭打者ホームランを打っても、次の打席で凡退してしまうとそっちに引きずられてしまうところがあるんです。脚力に関しては一塁まで3秒8〜9台、盗塁で3秒3〜4台のタイムを出すほど、プロの俊足選手と遜色ないレベルです。練習もコツコツ取り組める選手ですから、あとは気持ちの部分だけ。OBの脇谷亮太(元巨人ほか)も宮﨑敏郎(DeNA)も、『プロで金を稼ぐんだ』という強い気持ちを持ってやっていました。東門は謙虚なところはいいんですけど、プロで活躍するところまでイメージできるかですね。でも、まだまだ眠っている力はあるので、これからの選手だと思います」

 魚の大きさは水槽のサイズによって決まると言われる。本来なら大きく育つはずだった魚は、小さな水槽に入れられればそれなりの大きさで成長が止まってしまう。

 東門寿哉という大魚は、のびのびと泳げる大海原へと進めるのか。自身の可能性に気づいた時、きっと運命は変わるはずだ。

著者プロフィール

  • 菊地高弘

    菊地高弘 (きくち・たかひろ)

    1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。

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